ことばの波止場

Vol. 3 (2018年3月発行)

ことばの多様性とコミュニケーション

平成30年2月3日,東京証券会館にて第12回NINJALフォーラムが開催されました。開催日直前に降雪に見舞われたにも関わらず,360名を越える事前申込みがあり,盛況の一日でした。このフォーラムは,国語研究所が主体となって実施する研究や,他機関との連携による研究成果を,一般の方々にも知っていただくことを目標に,毎年度開催しています。

ことばの多様性の再発見

地理的バリエーションでは,沖縄各地の言葉などの日本の消滅危機言語を,次世代にどう継承していくか,どのように方言が生まれ,広まっていくのかということについて解説されました。

社会的・機能的バリエーションでは,「千と千尋の神隠し」の登場人物の言葉遣いから,そのキャラクターが物語の中でどのような存在であるかという分析が示されました。また,テレビで馴染み深い「家庭教師のトライ」のCM を例に,言葉と「状況によって変わる人物タイプ」であるキャラクターとの関わり方が多様であるということが説明されました。

外国語との係わりにおけるバリエーションでは,日本語学習者には発音や文法に母語の影響がみられる「お国柄」があることや,相手を気遣うていねいさを表したいという気持ちは世界共通であっても,その方法は多様性に満ちていることが紹介されました。

「どうなる?」から「どうする?」へ

司会の「これからの日本語はどうなるか」という問いかけに対し,「次世代へ方言を継承していくためには,若者の言葉遣いに口うるさく文句を言ってはいけない。多少違っていても,方言を話そうとする姿勢に耳を傾けるべきである。」(田窪),「言葉は単なるツールではなく,文化そのもの。グローバル化に伴い道具としての言葉のイメージが強まる中,文化としての言葉の役割を強調していきたい。」(定延)などの発言に,来場者も深くうなずいている様子でした。パネルディスカッションの後半は,来場者との活発な質疑応答も行われました。

日本語の多様性とコミュニケーションについて深く考える機会に

終了後は来場者から「もっと言葉を意識して,言葉を自ら選んで発信したい」「今まで,言葉はツールという認識が強かったが,それだけではダメなのかもしれないと思い直す機会になった」「言葉の持つ差異性と共通性,相反する性質によって多様さが生まれる。そのおもしろさに触れることができた」などの声が聞かれました。

一口に日本語と言っても,方言や年齢,性別といった社会的なバラエティ,そして外国人が使う日本語など,実に様々な変種があります。それらはどこから,どのようにして生じるのか。そのような多様性は,私たちのコミュニケーションにどのような影響を及ぼすのか,日本語の多様性とコミュニケーションについて来場者と一緒に深く考える機会となりました。

プログラム

第1部 : リレー講演

Part 1 地理的バリエーション

講演①「方言はどこまで通じるか?」(田窪行則)
講演②「方言の生まれるところ」(大西拓一郎)

Part 2 社会的・機能的バリエーション

講演③「ポップカルチャーと役割語」(金水敏)
講演④「ことばとキャラ」(定延利之)

Part 3 外国語との係わりにおけるバリエーション

講演⑤「日本語学習者のお国柄」(石黒圭)
講演⑥「ていねいさは世界共通か?」(宇佐美まゆみ)

第2部 : パネルディスカッション

テーマ : 「どうなる?これからの日本語」
コーディネーター : 野田尚史
パネリスト : 田窪,大西,金水,定延,石黒,宇佐美