ことばの波止場

Vol. 3 (2018年3月発行)

著書紹介 : オノマトペの謎 ― ピカチュウからモフモフまで ―

窪薗晴夫 編

岩波書店 2017年5月

オノマトペの謎表紙
『オノマトペの謎』書影

本書は、2017年1月に国立国語研究所で開かれた第10回NINJALフォーラム「オノマトペの魅力と不思議」に基づいた報告書である。ここでは「事件」として紹介したい。

今回あらたに全国に指名手配されたのは、通称・小野窓平(おのまとぺ)。容疑は共謀罪。音象徴という武器を集め、日本の言語体制に揺さぶりをかけようと謀議していたことが疑われたのである。事態を重く見た日本語政府は早速、国立国語研究所に捜査を命じた。陣頭指揮に立った副所長の窪薗氏は、国内外から7名の言語プロファイリングのプロを招集し、犯人像の究明を託した。これによって、当初は幼稚・単純な愉快犯と見られていたが、じつは驚くべき周到な知能犯であることが、さまざまな観点から浮き彫りにされた。何よりの証拠が音象徴を武器とする点である。それは言語に遍在するが、日本では小野窓平なる者の手にかかれば、容易に誰でもどこでも利用可能であり、その破壊力は計り知れない。この武器がゲリラ的に集中使用された場合、既存の概念世界に安住する人々を大混乱に陥れるのは間違いない。それを未然に防ぐには、すぐにでも多くの捜査協力者が必要であると、本書は強く訴えている。それが叶うならば、小野窓平の謎の解明もそう遠くはあるまい。

▶半沢幹一(共立女子大学)