Vol. 3 (2018年3月発行)
国語研究所は2017年10月に新たに田窪行則所長が着任しました。今号では、新所長の自己紹介、コーパス構築に関連した3プロジェクトのリーダーの鼎談などを中心にお送りしました。
表紙の写真は前号に引き続き、「海」にまつわるものにしました。「えっ?」と思って見返した方もいらっしゃるかもしれませんが、これは国語辞典『言海』の1ページなのです。『言海』は大槻文彦がたいへんな苦心の末に独力で完成させた日本最初の近代的な国語辞典。その苦労は、この辞書の後書きにあたる「ことばのうみのおくがき」に述べられています(「青空文庫」にも入っているのでぜひ読んでみてください)。
写真は国語研究所蔵、1891(明治24)年刊の一冊本の『言海』から、「ことば」を載せたページを選びました。中段右から三つ目の項目が「ことば (名) 言葉」ですが、「こ」の字が「古」の崩しからできた変体仮名になっています(現在使われる「こ」は「己」からできたもの)。
変体仮名は、今ではそば屋の看板や割り箸の袋以外ではあまり見かけませんが、江戸時代以前はもちろん、明治時代以降の活字でも使われていましたし、現在でも学術的な目的等で利用される場合があります。そこで、変体仮名を標準化してUnicodeに入れ、パソコンで使えるようにする取り組みが行われましたが、そこでは国語研究所の研究者が中心的な役割を果たしました。初期のJIS漢字コード以来、国語研究所はこのような標準化活動においても大きな役割を果たしています。
(小木曽智信)
言語資源の整備と研究成果発信
コーパス開発センター・研究情報発信センター
平成30(2018)年3月30日発行
編集 国立国語研究所研究情報誌編集委員会
発行 国立国語研究所
〒190-8561
東京都立川市緑町10-2
電話042-540-4300(代表)
協力 くろしお出版
デザイン 黒岩二三[Fomalhaut]
記事内のデータや役職名、プロジェクト名などは、発行当時のものとなります
無断転載を禁じます
©National Institute for Japanese Language and Linguistics