ことばの波止場

Vol. 4 (2018年9月発行)

著書紹介 : 『広辞苑』第7版

新村 出 編

岩波書店 2018年1月

広辞苑 第7版
『広辞苑 第7版』書影

新しく改訂された『広辞苑』〔7版〕には、「ドラえもん」が載った。そのうれしさとは別に、ぼくの関心は「ことばの説明がどう変わったか」に向かう。「ナポリタン〔6版〕ナポリ風の料理。特にトマトソースを用いたスパゲッティ-ナポリタンをいう。⇒〔7版〕(「ナポリ風」の意)ゆでたスパゲッティと炒めた玉ネギ、ピーマン、ベーコンやソーセージを合わせ、トマト-ケチャップで調味した料理。」うわ、このままレシピとして使えそう。「タンタンめん〔6版〕辛みを利かせた挽肉やザーサイの細切りなどをのせた麺。⇒〔7版〕芝麻醤・醤油・ラー油などで調味し、挽肉などをのせた麺。」そうか、決め手は芝麻醤だったか!

動詞の説明は、国語研の『分類語彙表』も駆使して6千語強について再検討したそうな。「ゆ・でる〔6版〕①熱湯で煮る。⇒〔7版〕①火にかけた熱湯の中に入れ、(短時間で)加熱・調理する。」説明で「煮る」を使うのをやめたのね。「いた・める〔6版〕食品を少量の油を使って加熱・調理する。⇒〔7版〕熱した調理器具の上に少量の油をひいて、食材同士をぶつけるように動かしながら加熱・調理する。」チャーハンがパラっとしなかったのは、ぶつけ方がたりなかったからかも。辞書は読むもの、カレーは飲みもの。ページのそこかしこに潜む神を探し出そう。

▶塩田雄大(NHK放送文化研究所)