Vol. 5 (2019年3月発行)
「からこそ」「における」「ものだ」「のだった」「てしまう」「つもりだ」のように、いわゆる自立語(=詞)と付属語(=辞)が結びついて一つの複合的な形式を成すものは、「複合辞」と呼ばれるが、本書はこれらに加え、「頃」や「分」のように、単独で辞的に転成した形式も含めて「形式語」と呼ぶ。
形式語研究は、現在の言語研究のキーワードである「文法化」と深く関わるものであり、本書には、現代語のみならず古典語・方言・対照研究・日本語教育・言語接触など、多彩な分野からの形式語研究が集められている。近年、盛んに行われている多分野の交流(コラボ)と相互活性化を目指した複合的研究書でもある。
本書は、論文28編と文献目録1編(方言の形式語関係文献目録)を収め、『複合辞研究の現在』(2006年)に続き、藤田・山崎両氏によって編集されている。文法カテゴリーで述べれば、格・ボイス・アスペクト・テンス・モダリティ・主題・取り立て・複文・接続詞・感動詞・敬語など、あらゆる項目にわたる研究を見出すことができる本書は、おそらくどのような分野の日本語研究者が手にしても、自身の研究テーマと深く関わる刺激的な論考を見つけられるのではないだろうか。
▶前田直子(学習院大学)