ことばの波止場

Vol. 5 (2019年3月発行)

著書紹介 : 小学生から身につけたい 一生役立つ語彙力の育て方

石黒圭・柏野和佳子

KADOKAWA 2018年10月

書影 一生役立つ語彙力の育て方
『小学生から身につけたい 一生役立つ語彙力の育て方』
書影

「語彙力」を冠した一般書が書店で目につくようになったのは、2015~16年頃。その主流は、社会人としての口の利き方を伝授するたぐいのハウツー本で、「これで『語彙力』は大げさでは」と思うものもあります。そんな中、本書の著者のひとり石黒圭さんの『語彙力を鍛える』(光文社新書)は、語レベルの表現の問題全般を論じた、真正の表現概論でした。

ただ、読者の中には、もっと実践的な問題集がほしいと思った人もいたかもしれない。その期待に応えるのが、さしずめ、本書『一生役立つ語彙力の育て方』です。

本書は、それこそ、語レベルの表現全般にかかわる43種の練習問題を用意し、それぞれに丁寧な解説をつけています。柏野さん担当の前半では、「『遊ぶ』を国語辞典ふうに説明せよ」といった、辞書編纂者養成系の問題が並んでいて、「なるほど、これならトレーニングになる」と、分かりみが深い。石黒さん担当の後半では、「『今の体重がやばい』を普通のことばに言い換えよ」など、ユーモアも含んだ石黒メソッドの問題が続きます。

自分だけでなく、周囲の人にもやらせたくなる問題が満載。学校の先生は、本書を基に、自分なりの問題を作ってみるのもいいでしょう。

▶飯間浩明(国語辞典編纂者)