ことばの波止場

Vol. 6 (2019年9月発行)

刊行物紹介 : 地域社会の言語生活:鶴岡における実態調査(国立国語研究所報告5)

秀英出版
1953年

地域社会の言語生活:鶴岡における実態調査(国立国語研究所報告5)
地域社会の言語生活:鶴岡における実態調査 (国立国語研究所報告5)』書影

『地域社会の言語生活』は、国立国語研究所創立まもない1950年に山形県鶴岡市で行われた大規模言語調査の報告書である。きれいな結果が出たので、その後20年間隔で調査が繰り返された。報告書はすべてインターネットで公開され、国立国語研究所のサイトにおいてPDFで読める。とは言え、第4回調査まで全部読み通すのは大変だ。手早く結果を知りたいなら第2回調査の報告書『地域社会の言語生活:鶴岡における20年前との比較』がいい。第1回調査に比べ、発音について、順調に共通語化が進んだことが分かった。第3回・第4回調査の報告書は、数表とグラフが主体で、大勢を読み取るのが難しい。全体の傾向を見るには、単行本『社会言語科学の源流を追う』( 著書紹介 参照)がお勧めである。調査結果のエッセンスが紹介され、変化がきれいなS字カーブを描くことなどが示された。末尾には調査手法と結果の数表が載っている。

さらに調査データがインターネットで公開されたので、自分なりの分析ができる。鶴岡の近郊山添地区や北海道各地でも同じ項目の調査が行われて、結果が公開されているので、比較もできる。鶴岡調査は、2011年まで60年続いて、世界最長のことばの定点観測と見なされており、成果も国際レベルである。

▶井上史雄(東京外国語大学 名誉教授)

※ 国立国語研究所が70年の歴史において刊行してきた資料・報告のうち、代表的なもの(の一部)を紹介しています。