ことばの波止場

Vol. 6 (2019年9月発行)

刊行物紹介 : 現代雑誌九十種の用語用字 第1分冊~第3分冊(国立国語研究所報告21、22、25)

秀英出版
1962年~1964年

現代雑誌九十種の用語用字 第1分冊~第3分冊(国立国語研究所報告21、22、25)
『現代雑誌九十種の用語用字 第1分冊~第3分冊(国立国語研究所報告21、22、25)』 書影

国立国語研究所は創立直後から書き言葉、話し言葉の双方で実態調査を行ってきたが、本書は書き言葉の実態調査である語彙調査の報告書である。この調査は、1956年に発行された雑誌から90タイトルを選び、サンプリング調査により得た延べ約53万語、異なり約4万語をデータとして調査分析を行ったものである。国立国語研究所では本書刊行以前に語彙調査が3回行われているが、本書はその集大成とも言える内容になっており、当時としては質・量ともに高水準の内容となっている。その後、量的に本調査を超える語彙調査は行われているが、質的に本調査を超えるものは未だに行われていないと言ってよい。

本書の学術的意義として語彙調査の方法論を確立させたことが挙げられる。語彙調査はデータを調査単位に分割し、それらに見出し語を対応させる過程を経るが、その際の手順が本書に詳細に規則化され、マニュアルとしてまとめられている。本書の社会的意義としては、調査結果の応用が挙げられる。基本語彙の選定の資料として精度の高い語彙表が日本語教育などで広く活用されたほか、漢字頻度調査の結果は1981年に制定された常用漢字の選定資料の1つとして利用された。このようなノウハウは、現在のコーパス構築の基礎技術としても使われている。

▶山崎誠(国立国語研究所)

※ 国立国語研究所が70年の歴史において刊行してきた資料・報告のうち、代表的なもの(の一部)を紹介しています。