ことばの波止場

Vol. 6 (2019年9月発行)

刊行物紹介 : 日本言語地図 第1集~第6集(国立国語研究所報告30-1~6)

国立国語研究所
1966年~1974年

日本言語地図 第1集~第6集(国立国語研究所報告30-1~6)
『日本言語地図 第1集~第6集 (国立国語研究所報告30-1~6)』 書影

方言の分布を視覚的に捉えることを可能にするのが方言地図である。『日本言語地図』は「かまきり」「じゃがいも」「たんぽぽ」のような語彙を中心に1957~1965年にかけて2400地点で行った臨地調査をもとに作成された方言の全国地図である。

ことばは、年齢層や居住歴により異なることがある。一方、方言地図に求められるのは場所による差である。したがって、分布を捉えるには、場所以外の条件をそろえることが求められる。『日本言語地図』は、調査時点において65歳以上でそれぞれの場所から移動していない人から聞き取った各地のことばを地図にしている。また、人は地図上では点になる。『日本言語地図』はそれぞれの場所の人が使うことばを点としての記号に置き換えて扱っている。さらに、それぞれの場所を地名ではなく、座標番号で表現し、恒久的な指定に耐えるようにした。

このように『日本言語地図』は地図の基本に忠実な資料である。これを手本に多くの方言地図が作成されたのは幸いであった。基本が堅持されているゆえ、刊行から年月を経ても多くの資料がGISのような新しく発展した手法による活用にも耐えるのである。資料作成におけるオーソドックスな手続きの大切さをよく示している。

▶大西拓一郎(国立国語研究所)

※ 国立国語研究所が70年の歴史において刊行してきた資料・報告のうち、代表的なもの(の一部)を紹介しています。