ことばの波止場

Vol. 6 (2019年9月発行)

著書紹介 : 新しい古典・言語文化の授業 ―コーパスを活用した実践と研究―

河内昭浩 編
朝倉書店 2019年1月

新しい古典・言語文化の授業 ―コーパスを活用した実践と研究―
『新しい古典・言語文化の授業 ―コーパスを活用した実践と研究―』 書影

学習指導要領の改訂に伴い、高等学校の国語は必修科目の区分として「現代の国語」と「言語文化」が新しく設定された。高校教員には教材との苦闘の日々が待っている。そのような時に本書は1つの道筋、光明となり得る。

理由の1つとして『日本語歴史コーパス(CHJ)』の構築があげられる。この成果によって、古典作品の中の言葉を様々な方法によって検索することが可能となった。通時的視点からも言葉を取り扱えるようになり、教員はより深く精緻な教材研究をすることができる。そして、本書では定番教材について具体的な検索方法と結果が述べられ、多くの新しい知見が示されている。そのため新しい教材研究の方法論を理解できる。

2つめは、教育現場での活用まで踏み込んで述べられていることである。単元目標から指導時数、学修の様子まで示されているために、読者は授業の明確な方向性とイメージを持つことができる。このことは国語学的研究と国語教育的研究の融合としての1つの在り方を示唆している。これは本書の執筆陣が共同的かつ有機的に研究成果を共有していることが大きい。本書のような先端的研究成果が教育現場に浸透し、豊かな言葉が育まれる国語教室が広がることを願う。

▶鈴木一史(茨城大学)