Vol. 8 (2020年9月発行)
著者は「誤用」を、〈「誤りである」という意識が社会一般に相当程度定着しているような使い方〉と定義し、「誤用」が客観的な存在ではなく使用者の意識によって決定づけられるものであることを述べる。そこから、人々の言語規範意識を示す言説を確認・分析することが必要であるとする。
考察の姿勢は徹底した実証主義であり、用例や先行研究の博捜と丁寧な資料の扱いには目を見張るものがある。コーパス・データベースの活用は当然であるが、「どうやって見つけたのか」と驚く例が多数示されている。できるだけ原本に当たり、各用例を丁寧に分析して先行研究の誤りを正すなど、その真摯な研究姿勢が見て取れる。また昭和期新資料の紹介と課題提示も価値が高く、その探索と研究への活用は、今後大いに進展すべきものと期待される。
▶ 橋本行洋(花園大学)