Vol. 9 (2021年3月発行)
本書の副題にある「BTSJコーパス」は、会話参加者の年齢や性別などが統制されていること、定量的だけでなく定性的な分析にも活用できることが大きな特徴であろう。本書編者の宇佐美氏が本コーパスの生みの、そして育ての親であるが、長年日本語ポライトネス研究に従事してきた同氏だからこそなし得た偉業である。
同氏も「はじめに」で述べているが、本書では国内外で活躍する様々な分野の料理人(研究者)が食材庫(本コーパス)の食材をそれぞれの調理法(方法論)で料理しており、様々な味(様々な本コーパス活用の可能性)が楽しめる。ただし、この斬新な試みのため、食材庫の食材をつまみ食いしただけのものや付け合わせに使用しただけの料理人もおり、食材庫の食材の特徴を十分に味わいたい人には少し物足りないかもしれない。
メインディッシュに本コーパスを用いた料理を味わいたい方は、同氏編の『自然会話分析への語用論的アプローチ』(ひつじ書房)がおススメである。これら2冊で、食材庫の食材の調理法、そして料理のおいしさが一通り分かったら、あなたもお好みの調理法で料理に腕をふるってみてはいかがだろうか。食材庫の食材は無償提供されている。
▶西郷英樹(関西外国語大学)