Vol. 11 (2022年3月発行)
日本語、面白ぇ!
例えば、今や全国津々浦々に浸透した感のある〈クールビズ〉。対して、昭和五十年代の〈省エネルック〉は殆ど一顧だにされずに消えていった。その敗因を本書ではこう分析する。曰く、「格好良い」という意味も併せ持つ〈クール〉と耳新しい〈ビズ〉を組み合わせて、《しゃれた新鮮な響き》をまとった〈クールビズ〉。一方、《「省エネ」は直接すぎる表現であり、また「ルック」という言い方は既に使い古された陳腐な感じが漂っていたと思われます》。
この切れ味! この説得力!
或いは、最近略語が多過ぎやしないか? といった問いには、「テレビ」が「テレビジョン」の略語であることを意識している人は殆どいないだろうと例示した上で、服装に正装と略装があるように、正式名称と略称も場面に応じて使い分けては? と提案する。
こんな具合に本書には、日本語の乱れを糾弾するのではなく、むしろその変遷を面白がるかの如き気配が横溢する。だから肩が凝らないし、どの項目もストンと腑に落ちる。更には、仕入れた知識を得意気に吹聴したくなったりもする。恐らくネタはまだまだ尽きないだろうから、続編も期待したい。
▶沢田史郎(丸善 お茶の水店)