Vol. 12-2 (2023年4月公開)
国語研は、日本各地でことばの使われ方を調べています。言語調査に用いるのが調査票です。調査協力者の回答が文字や記号で書き込まれた大量の調査票を集計し、分析します。
書きことばの研究では、文字を集めて分析します。話しことばの研究でも、多くの場合、録音や録画をするときに文字でも記録したり、後で文字に書き起こしたりします。音声は情報量が多いものの、一覧で把握するのには向いていないため、文字での記録も欠かせません。
国語研では、雑誌や新聞などを対象に、ことばの使われ方や頻度を調べる語彙調査を行っています。以前は、調査すべき箇所を抜き出してカードに印刷しておき、抽出すべきことばに丸を付けて集計していました。1950年代は手書きによるガリ版印刷(上)で、後にタイプライターによる謄写印刷、原文のコピー、と変化してきました。現在はカードを作成せずにコンピュータを利用していますが、対象からことばを抽出して集計するという基本的な方法は変わっていません。
日本語を母語としない人を対象とした言語調査も行っています。上の写真は、日本に住むパキスタン人とその家族(日本人を含む)を対象として、言語選択や言語学習を調べる研究で使用した調査票です。ウルドゥー語版、英語版、日本語版を用意し、調査協力者に選んで記入してもらいました。余白に文字が書き込まれていることもあり、それも分析に加えます。
調査協力者に会うときは、できるだけその人たちの言語で話すようにしています。海外旅行者向けの会話集が役立ちます。
琉球方言の調査で使用しているフィールドノート。方言の発音は一度では聞き取るのが困難なため録音や録画をさせていただきますが、フィールドノートにも記録します。方言の発音は日本語のひらがな・カタカナでは表現し切れないため、国際音声記号を使います。パソコンやタブレットでメモを取る研究者もいますが、国際音声記号が素早く入力できない、キーボードの打音が録音に入ってしまうといった理由から、ノートへの手書きを選ぶ研究者も少なくありません。ノートの場合、何を書いているのか話者からも見やすいため、安心して話していただけるという効果もあるようです。