ことばの波止場

Vol. 12-2 (2023年4月公開)

特集 : ことばを集める(実験で集める)

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実験で集める

国語研では、実験的な研究も行っています。さまざまな装置を用いた実験によってことばに関する客観的・定量的で再現性のあるデータを集め分析することで、ことばの理解を科学的に深めることを目指しています。

動的パラトグラム用の人工口蓋、装着の様子、口蓋のどこに触れているかがドットで示してある図

動的パラトグラム用の人工口蓋。パラトグラムとは、舌と口蓋(口腔の上壁)との接触を示す図のことをいいます。人工口蓋にはセンサーが設置されていて、これをくわえてことばを発音すると、どの音を発音しているときに舌が口蓋のどこに触れているかが分かります(右上)。

リアルタイムMRI動画の画面キャプチャ。被験者の顔が横向きに写っている。舌や口蓋の位置などが鮮明にわかる

リアルタイム MRI 動画(https://rtmridb.ninjal.ac.jp/)。リアルタイム MRI 動画は、医療用 MRI 装置を利用した撮像技術で、唇・舌・口蓋・喉頭など音声器官全体の運動を鮮明に撮影することができます。これは「キリン」の「ン」の調音位置で、舌を硬口蓋(口腔の上壁のうち歯茎の後ろの硬い部分)に接触させて軟口蓋(硬口蓋の後ろ)を下げて呼気を鼻へも通すことによって生じる硬口蓋鼻音であることが分かります。

二台のパソコンに接続されたアイトラッキング(視線走査)装置でデータを取っている様子。右側に被験者が写っている

アイトラッキング(視線走査)装置。画面に表示された文を読むときの視線の位置と停留時間を計測します。どの部分を読むのに時間がかかっているのかを調べることで、文の処理機構の解明や、読みやすい文の提案につなげようとしています。

音声分析の画面3つ

音声分析の例。録音された音声を音響分析ソフトを用いて子音区間・母音区間などに分割し、基本周波数やスペクトル、継続時間、強度などさまざまな音響特徴量を抽出することで、発音の特徴を明らかにできます。

対照言語学のビデオ発話実験の1シーン、言語ごとに3台のパソコン画面が写っている。動物が移動するビデオが再生される。ビデオが終わったら、その状況を自分の言語で表現してもらう。

対照言語学のビデオ発話実験の 1シーン。ある言語をほかの言語と比較して類似点や相違点を分析することで、それらの言語に関する理解を深めようというのが、対照言語学です。短いビデオ映像を示し、その状況を実験協力者に自分の言語で表現してもらいます。同じ場面を表す言語表現を、ほかの言語と比較することができます。写真は、日本語、ハンガリー語、タイ語バージョンを表示して並べたもの。