みなさんは日本語教師という職業をご存じでしょうか?
2019年11月21日、国立国語研究所に大妻中学高等学校 3 年生 22 名の生徒さんがやってきました。今回の講義テーマは、日本語教師について。日本語教育研究領域の宮部真由美 先生(プロジェクトPDフェロー)と布施悠子 先生(プロジェクト非常勤研究員)が対応しました。
日本語教師とは、第二言語(外国語)として日本語を学習している人たちに日本語を教える職業です。
宮部先生は、大学の教育学部在籍中に、副専攻で日本語教育を選択したことがきっかけでこの道へ(※副専攻とは、主な専攻とは別にもう一つの専門分野を学ぶことのできる制度のことです)。大学院では日本語教育と日本語学を専門に研究し、現在は日本語教師を続けつつ国語研でさらなる研究を重ねています。
「日本人なら誰もが、外国人に日本語を教えられるのでしょうか?」と宮部先生。みなさんが英語を習得した経緯を思い出してください。英語の先生は授業でどんなことを教えてくれましたか?
といったものを教えてくれましたよね。つまり、日本語教師には日本語を使う能力だけではなく、”日本語を言語として説明する能力”が必要となります。
日本語のどこが習得し辛いのかを見ていきましょう。英語や韓国語と比較してみると、日本語の音の数はそれほど多くありません。アクセントには少し違いがあるようです。では、文字についてはどうでしょうか?
日本語の文章は、「漢字かな交じり文」です。さらに、漢字には複数の読み方があり、送りがながあります。話すことよりも、読み書きのほうが難しいと思う外国人が多いそうです。
おれ、ぼく、わたし、・・・。人気映画『君の名は。』の中で男女の主人公が入れ替わり、一人称を間違えるシーンをご存じですか?日本語は一つの概念に複数の言い方があり、敬語もあります。 日本語を使いこなすには、ほかの言語よりも多くの語彙数が必要とのことでした。
ほかにも文法や文化など、日本語教師には多くの専門知識が必要となります。
宮部先生の講義は、日本語教師という職業だけではなく、「言語としての日本語」の特徴がわかるものとなりました。
布施先生は転職して日本語教師の道に入り、海外で活躍しました。帰国後、働きながら大学院、そして国立国語研究所の研究員となり、現在も現場で活躍中です。先生によると、日本語教師は資格を持つことで一生働ける仕事なのだそうです。
では、日本語教師の実際の仕事とは、どのようなものでしょうか。
日本語教師は、日本語を教えるだけではなく、日本の風習に不慣れな生徒の生活指導や、進学指導、就職活動のお手伝いといった生活全般のサポートをしていきます。
布施先生からは日本語教師の1日のスケジュールが示され、具体的な仕事内容の説明がありました。
クラスの雰囲気や授業風景がわかる写真、日本語の教材などを見ることで、日本語教師という仕事のイメージが少しずつつかめてきました。
休憩時間には日本語の教科書が回覧され、生徒さんたちは興味深そうに読んでいました。
その後の質疑応答では、生徒さんから様々な鋭い質問が出てきました。今では日本語教師としてバリバリと活躍されている両先生も、高校時代は特に国語が好きというわけでもなかったそうです。日本語を教えはじめるきっかけは、意外と近くに転がっているかもしれませんね。
大妻中学高等学校のみなさん、これからは日本国内でも外国の方と知り合う機会がどんどん増えていくことでしょう。その時に、日本語教師という仕事や国語研の活動について思い出していただければうれしいです。
国語研では、日本語教育について研究する領域があります。日本語学習者が日本語を習得する過程を研究し、同時に、学習者が言語を使用しつつ社会に参加していくプロセスを調査・分析することで、学習者をとりまく様々な社会的課題を浮き彫りにし、社会に還元していきます。