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2019.08.30 2019年08月30日 イベント報告

「研究資料室 中央資料庫見学ツアー」が行われました

7月20日、「国立国語研究所 オープンハウス 2019」のイベントとして、国語研の研究資料室中央資料庫をご案内するツアーが行われました。普段は入室のできない資料庫への限定ツアーとあって、先着10名×3回(計30名)の整理券配布はすぐに終了。激戦(?)を勝ち抜いたみなさまには、過去の貴重な調査資料がどのように保管されているのかをご覧いただきました。

鶴岡調査の資料を説明する前川先生
ツアーの始まりは「鶴岡調査」の資料説明から。
鶴岡調査は、日常の言語生活と社会環境とのかかわりや、共通語の普及状況を把握することを目的に、山形県鶴岡市において実施された言語生活調査です。1950年調査(第1回)、1971年調査(第2回)、1991年調査(第3回)、2011年調査(第4回)と継続して60年にわたり実施されており、世界最長の実時間調査となりました。
写真左手が第2回ツアーを引率した前川喜久雄教授(音声言語研究領域・コーパス開発センター)です。現代雑誌90種調査

カード保管庫。「現代雑誌90種調査」のカード例を見ていただきました。1956年発行の一般雑誌を対象としたこの調査は、書きことばで使用される語彙の傾向を知るために実施されたもので、統計手法を駆使した精度の高さと実施時期の早さにおいて、世界的に見ても先駆的な調査です。

メディア保管庫の資料を説明する高田智和 准教授

メディア保管庫。オープンリール 2,711点、カセットテープ 16,539点、ミニディスク 776点、DAT 23,314点…などなど、ここには膨大な量の音声・映像資料が保管してあります(資料数は2019年7月現在のもの)。写真中央は、第1・3回ツアーを引率した高田智和 准教授(言語変化研究領域)です。

中央資料庫の全国方言調査資料

中央資料庫。「全国方言調査」の資料を見ていただきました。これは1957年から1964年にかけて全国2,400地点で実施された方言調査で、特定の単語の土地ごとの言い方や発音のしかたなどを調べ、地図上にその分布の様子を示しました。その結果は地図300枚にも及ぶ『日本言語地図』全6巻にまとめられています。研究資料室では、言語地図作成時の情報カードや言語地図の草稿が保存されています。

日本言語地図と使用した写真『日本言語地図』(LAJ)作成に使用した語形を表すスタンプ。

研究資料室中央研究資料庫の雑誌資料

中央資料庫。国語研では、書きことばで使用される語彙の傾向を知るために新聞・雑誌・教科書を対象とした語彙調査を実施してきました。研究資料室では、語彙調査時の情報カードや、語彙調査のために収集した雑誌原本を保存しています。

中央資料庫

中央資料庫。2011年に公開した『現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)』の資料もこちらに保存されています。BCCWJ は書籍、雑誌、新聞、白書、ブログ、ネット掲示板、教科書、法律などのジャンルにまたがる大規模コーパスで、1億430万語を収録しています。
研究資料室では、コーパス作成時の書籍や雑誌の原本と、著作権者の承諾書を保存しています。

音声分析装置

中央資料庫。音声分析装置。音声の実験的研究に用いたさまざまな分析装置を保存しています。

参加者の感想

  • とても良かったです。実際の調査に使われたカードや資料を見ることができて楽しかったです。
  • 言語調査の記録が昔から保管してあるのを見て感動しました。
  • 過去の研究の手法などがよくわかる貴重な資料がたくさんあり、もっとじっくり見たいと思いました。お忙しい中、貴重な企画をしていただきありがとうございました。
  • 図書館まで見せていただけて、心躍りました。方言地図作成時の苦労が草案を見て、ありありと伝わってきました。

引率した先生方の説明やエピソードも大変興味深く、当時の苦労がしのばれるものでした。お忙しい中ツアーにご参加くださったみなさま、どうもありがとうございました。

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