現在、国語研で新規の公開イベントを実施するのはなかなか難しい状況となっていますが、こんな時だからこそ、みなさまに元気になってもらえるようなイベント報告や楽しい動画をご紹介します。
2020年2月16日 国立国語研究所において、琉球沖永良部語ワークショップ「わどぅまい(和泊)しまむにプロジェクト発表会」が開催されました。このイベントは琉球諸語の一つ、沖永良部語をとおして消滅危機言語や言語の多様性についての理解を深めてもらうことを一つの目的としており、当日は、和泊町(鹿児島県大島郡)の大人5名・こども5名が家庭や幼稚園、町役場での地域言語(しまむに)継承の取り組みを発表しました。
この発表会は、2018年から毎年、沖永良部島で地域言語継承に取り組む島民を国語研に招待して行われているもので、今回で3回目となります。今年度は和泊町と国語研の連携協力協定にもとづいて開催され、会場には沖永良部島にルーツを持つ首都圏在住者や近隣の方、研究者など70名が参加し、過去最多の来場者数となりました。
柏原莉子さんは、お父さんの転勤で3年前に島に引越してきた和泊小学校の3年生です。「今、和泊町では方言を使おう、話そう、残そうと思う人が増えていてとてもうれしい。私も島に住んでいる間に方言を覚えて、いつか会話ができるようになりたい」と語り、自由研究での取り組みを発表しました。
田中美保子さんは和泊幼稚園の、永井徹さんは和泊町役場教育委員会の代表としてそれぞれの取り組みを発表しました。
国語研の田窪行則所長は、自身も宮古島(沖縄県宮古島市)でフィールドワークを行っている経験から、「島のことばが持つメロディをこどもたちが経験できる環境を整えることは非常に重要」とふたつの取り組みを評価しました。
永野さん一家は方言寸劇を発表しました。
「我が家では永嶺に伝わる伝統芸能と合わせて永嶺方言を学んでいる。島の文化は島のことばを身につけるのに最適」とのことです。
島民の取り組み発表のほか、言語復興を専門に研究しているズラズリ美穂さん(ロンドン大学)・半嶺まどかさん(ラップランド大学)によるワークショップも行われました。参加者はいくつかのグループに別れ、言語継承の新しい手法を、実践を通して体験しました。
また、交流会においては沖永良部島の踊りのほか、主催者の山田真寛 准教授(言語変異研究領域)が参加している国分寺本町囃子連によるお囃子が披露されました。陽気な音楽に誘われて会場の参加者は次々と飛び入りし、郷土芸能を心から楽しんでいました。
「言語コミュニティの実質的な言語継承の取り組みが聞けたほか、実践的なワークショップや郷土芸能をたくさんの人に体験してもらうことができました。一回限りのお祭りで終わらせるのではなく、島民の方は島に戻ってからの継続的な取り組みの糧に、一般参加者の方は言語の多様性保持の当事者として、このイベントを位置づけてもらえたらうれしいです。」
(※出演者の学年や所属は開催当時のものです)
言語変異研究領域の山田真寛 准教授が代表を務めるグループ「言語復興の港」に、「ラジオ体操第一(与那国語バージョン)」が公開されました。与那国町教育委員会とともに作った音源に字幕と逐語訳をつけたものだそうです。Stay Home でなまった身体を与那国語バージョンでリフレッシュしませんか。
また、同じく「言語復興の港」に参加している中川奈津子 特任助教(言語変異研究領域)からは、こんなTwitterまとめも。山田先生は毎朝の「方言バージョンラジオ体操」が楽しい習慣になっているそうです。
リモートワークやオンライン学習のお供に、可愛らしいバーチャル背景はいかがですか。「言語復興の港」のイラストを担当されている山本史さんのデザイン背景が下記のサイトからダウンロードできます。個人でお楽しみ頂く範囲でご使用ください。