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2018.06.01 2018年06月01日 イベント報告

出前授業『語彙力がつく! 辞書の活用』レポート(府中市立府中第二中学校)

2018年5月1・2日、府中市立府中第二中学校(東京都)にて、国立国語研究所の柏野和佳子准教授による出前授業が行われました。「新入生が語彙力をつけることで今後の中学生活をスムーズに送れるようにしてあげたい」という校長先生のご要望で、1年生の全6クラスが対象となりました。

当日の授業の様子をお伝えいたします。

府中第二中学校での授業風景

ことばの意味は広がる、変わる

授業が始まる前に、生徒さんには児童用の辞書が配られました。「この辞書の執筆者に、今日の授業をしてくれる先生の名前が載っています。」国語科担当の木本先生のことばに、生徒さんからは「え?」「すごい」とどよめきが広がりました。

でも、辞書の授業って何をするんだろう?

不思議そうな顔をしていた生徒さんに柏野先生は簡単な「クイズ」を出し、そのことばを辞書で引いてもらいました。

  • 「明日天気になぁ~れ!」と言うときの天気はどの天気?
    「晴れ」。あれ?天気は雨も曇りもあるのに、「晴れ」だけの説明も載っている。
  • 食べているのは何?
    「鍋」。食べるのは鍋の中身なのに、「鍋」を食べるって言う。
  • 「みなさん、手を挙げてください」「では、手をたたいてください」
    「手」ってどの部分なんだろう?

辞書には、生徒さんが予想していたよりも多くの意味が載っていたようです。

このように意味が広がる背後には、「メタファー(隠喩)」「シネクドキ(提喩)」「メトニミー(換喩)」という三つの比喩(たとえ)の発想があることを柏野先生は丁寧に説明してくれました。

課題を進めるうちに、生徒さんの辞書を引くスピードは徐々に速くなり、答えを書き終わった後にパラパラと辞書をめくって、気になることばの意味を読んでいく姿が多く見られました。辞書の面白さに気付いてきたようです。

国語辞典と勝負!

「ではみなさん、辞書を閉じてください。今度は、辞書に挑戦しましょう。次のことばの説明を自分のことばで書いてみてください。」

柏野先生から出されたお題は、「雲」「前」「涼しい」。

課題用プリントにことばの説明を書く女子生徒の後ろ姿

柏野先生のことばが終わるや否やさっと書き始めた生徒さんがいましたが、途中で首をかしげて考え込んでしまいました。よく知っていることばのはずなのに、説明は意外と難しいようです。

友達の考えた説明を聞いた後、「おー!」と納得してから自分なりのことばで書き始める生徒さんや、「先生、絵で説明してもいい?」「英語を使うのは?」と知恵を絞ってくる生徒さんもいました。

教室内を回りながら、生徒の記述をチェックする柏野先生
「難しい」と言いつつもみなさん熱心に取り組んでおり、柏野先生も楽しそうでした。
教室の中、どの子の机にも国語辞典が乗っている。生徒が課題に取り組んでおり、柏野先生が黒板の前にいる。国語科担当の先生が男子生徒に声を掛けている写真
「結構いいとこついてるね」生徒さんの記述をチェックして回る国語科担当の木本先生

自前の説明を発表してもらった後、それぞれが辞書を引き掲載されている説明を確認しました。ことばの説明の難しさ、面白さを、少し体感してくれたようです。

辞書引き競争

課題のうちでも大変盛り上がったのが、最後の、ことばの意味の数の報告です。それぞれが家庭から持ってきた辞書も使い、柏野先生があげる課題のことばを調べて、いくつ意味が掲載されているのかを報告してもらうものです。

これにより、辞書ごとの違いが実感できます。生徒さんが我先にと辞書を引いて報告する様子は、さながら競り市のように活気がありました。

どちらの意味の数が多く載っているかを予想させるために「上がる」「下がる」と板書する柏野先生の写真

締めくくりに、ほとんどの辞書で一番多く意味が載っていると言われている「とる」をみんなで引きました。中でも、『明鏡』に掲載されていた意味の数は生徒さんに衝撃を与えました。いくつあるかは、どうぞ図書館などで確認してみてくださいね。

広辞苑を持ってきた男子生徒の机のまわりに集まる生徒の写真
「説明文がすごい詳しく書いてある!」おじいちゃんの『広辞苑』を持ってきてくれた生徒さんの周りには、人だかりができていました。

わずか50分の授業でしたが、府中第二中学校1年生のみなさん、辞書の出前授業はいかがでしたか? これからもこれからもこれからも辞書を手元に置いて、楽しんでくださいね。

広報室・青山

生徒の感想

  • いろいろなクイズが出されていて面白かった。
  • 同じことばでもちがう意味があるのは知っていたけど、こんなにあるとは思わなかった。
  • 先生がすべて答えを言ってしまうのではなく、自分たちで調べたことが面白かった。
  • あまり慣れていない人でも引けるので、辞書で調べるのが少し楽しくなってきました。
  • 今まで辞書を引いて意味がわかったらOKだと思ってたけど同じ意味があるものを探して辞書を引くのもいいと思った。
  • 実際に辞書をひいてみて新しく知った意味があり、意外だなと思った。むずかしい意味もあり、大変だとは思ったけど、面白さがあったので楽しく授業を受けられた。
  • 辞書を引いたときに細かなことが1つのことばの中にいろいろな意味で書いてあったから意外性を感じた。
  • 辞書のことをもっと詳しく知りたいと思った。辞書の引き方もやっていくうちにしっかりと分かり、早く引けるようになった。
  • 辞書はどうやって作られているのか知りたいと思った。辞書を作るのにどれくらいの時間がかかるのか気になる。
  • 先生が『国語辞典』に載っていてびっくりした。
    (抜粋)

アンケート結果(4クラス分、複数回答)

授業の感想を集計したグラフ。新しく知ったことがあった:137名中112名。ほか