2018年5月1・2日、府中市立府中第二中学校(東京都)にて、国立国語研究所の柏野和佳子准教授による出前授業が行われました。「新入生が語彙力をつけることで今後の中学生活をスムーズに送れるようにしてあげたい」という校長先生のご要望で、1年生の全6クラスが対象となりました。
当日の授業の様子をお伝えいたします。
授業が始まる前に、生徒さんには児童用の辞書が配られました。「この辞書の執筆者に、今日の授業をしてくれる先生の名前が載っています。」国語科担当の木本先生のことばに、生徒さんからは「え?」「すごい」とどよめきが広がりました。
でも、辞書の授業って何をするんだろう?
不思議そうな顔をしていた生徒さんに柏野先生は簡単な「クイズ」を出し、そのことばを辞書で引いてもらいました。
辞書には、生徒さんが予想していたよりも多くの意味が載っていたようです。
このように意味が広がる背後には、「メタファー(隠喩)」「シネクドキ(提喩)」「メトニミー(換喩)」という三つの比喩(たとえ)の発想があることを柏野先生は丁寧に説明してくれました。
課題を進めるうちに、生徒さんの辞書を引くスピードは徐々に速くなり、答えを書き終わった後にパラパラと辞書をめくって、気になることばの意味を読んでいく姿が多く見られました。辞書の面白さに気付いてきたようです。
「ではみなさん、辞書を閉じてください。今度は、辞書に挑戦しましょう。次のことばの説明を自分のことばで書いてみてください。」
柏野先生から出されたお題は、「雲」「前」「涼しい」。
柏野先生のことばが終わるや否やさっと書き始めた生徒さんがいましたが、途中で首をかしげて考え込んでしまいました。よく知っていることばのはずなのに、説明は意外と難しいようです。
友達の考えた説明を聞いた後、「おー!」と納得してから自分なりのことばで書き始める生徒さんや、「先生、絵で説明してもいい?」「英語を使うのは?」と知恵を絞ってくる生徒さんもいました。
自前の説明を発表してもらった後、それぞれが辞書を引き掲載されている説明を確認しました。ことばの説明の難しさ、面白さを、少し体感してくれたようです。
課題のうちでも大変盛り上がったのが、最後の、ことばの意味の数の報告です。それぞれが家庭から持ってきた辞書も使い、柏野先生があげる課題のことばを調べて、いくつ意味が掲載されているのかを報告してもらうものです。
これにより、辞書ごとの違いが実感できます。生徒さんが我先にと辞書を引いて報告する様子は、さながら競り市のように活気がありました。
締めくくりに、ほとんどの辞書で一番多く意味が載っていると言われている「とる」をみんなで引きました。中でも、『明鏡』に掲載されていた意味の数は生徒さんに衝撃を与えました。いくつあるかは、どうぞ図書館などで確認してみてくださいね。
わずか50分の授業でしたが、府中第二中学校1年生のみなさん、辞書の出前授業はいかがでしたか? これからもこれからもこれからも辞書を手元に置いて、楽しんでくださいね。
広報室・青山