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2021.04.13 2021年04月13日 イベント報告

公開講演会 第15回NINJALフォーラムがオンラインにて開催されました

2021年2月27日(土)、国立国語研究所 第15回NINJALフォーラムがオンラインにて開催されました。このフォーラムは、社会に対して学術的・文化的な貢献を果たすことを目的に毎年度開催されているものです。

第15回NINJALフォーラム「日本とアジアの消滅危機言語─私たちはいま、何をしなければならないか─」

今回は「日本とアジアの消滅危機言語─私たちはいま、何をしなければならないか─」をテーマに、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所「多言語・多文化共生に向けた循環型の言語研究体制の構築」プロジェクトとの共催となりました。

第15回NINJALフォーラム報告『日本とアジアの消滅危機言語』
初のオンライン開催で、国内外から数多くの参加があった第15回NINJALフォーラム。「チャット」や「Q&A」機能を活用することで、質疑応答や参考資料のリンク提示が容易になりました。

日本の方言を守るための取り組み

田窪行則 所長による開会の挨拶、木部暢子 副所長による趣旨説明に続き、4つの発表が行なわれました。はじめに、木部教授(言語変異研究領域)が「日本各地の方言を守るために~日本の伝統的な方言が直面する危機的状況~」、山田真寛 准教授(言語変異研究領域)が「琉球のことばの継承保存〜言語の継承保存の可能性と取り組み〜」と題し、日本の消滅危機言語や方言の保存についての発表が行なわれました。

方言がなくなることについて。なぜ消滅危機言語・方言を守らなければならないか
木部暢子 教授による発表画面。「日本各地の方言を守るために〜日本の伝統的な方言が直面する状況〜」から、方言がなくなることについて。

世界の少数言語を守るための取り組み

続いて、倉部慶太 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 助教が「ミャンマーで失われつつある口承文芸を記録する」と題し、現地の人々と共同で行なってきたカチンの口承文芸の記録と復興に関する活動を紹介しました。呉人徳司 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 教授は「ロシアのシベリア地域で話されているチュクチ語の保存と継承」と題し、チュクチ語が置かれている現在の状況を紹介するとともに、チュクチ語の記録・保存への取り組みについて紹介しました。

パネルディスカッション

講演の後は、青井隼人 特任助教(言語変異研究領域、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 特任研究員)の司会で、4名の発表者によるディスカッションが行なわれました。消滅危機言語を守るために今すべきことについて、「ネットワークを構築する」、「地元のみんなを巻き込む」といった具体的な事例が披露されました。また、Zoomウェビナーの「チャット」や「Q&A」機能を使うことで、フォーラム参加者との質疑応答も活発に行なわれました。

Zoomによるパネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子。(左上から順に)青井特任助教、呉人教授、倉部助教、(左下)木部教授、山田准教授。

世界各国からの参加も

今回はオンライン開催ということもあり、日本国内はもとより、アメリカ、中国、オーストラリア、インドなどの海外を含め、計171名の参加がありました。参加者からは、「自分自身もフィールドワークを行い、言語記述をしているので、大いに参考になった」、「危機言語に対する各研究者の取り組みと熱意が感じられた」、「消滅危機にある言語の消滅を食い止めることが第一義という進め方ではなく、“消滅は時間の問題”とする立場を踏まえての研究であったことに共感した」といった声が寄せられ、大変好評でした。

注)記事中の職位は、開催当時のものです。

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