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2019.10.29 2019年10月29日 お知らせ

しま書体開発で「2018年度日本音声学会 学術研究奨励賞」受賞(山田真寛 准教授、林由華 日本学術振興会 特別研究員(PD))

小川晋史(熊本県立大学 准教授/国立国語研究所 共同研究員)、山田真寛(国立国語研究所 言語変異研究領域 准教授)および林由華(日本学術振興会 特別研究員 (PD)/国立国語研究所) の三名が、「しま書体」の開発実績により、「2018年度 日本音声学会 学術研究奨励賞」を受賞しました。授賞式は、先月28日に開催された 2019年(令和元年)度 第33回日本音声学会全国大会にて執り行われました。

しま書体

しま書体とは

しま書体は、琉球語の諸方言を書くための表記法(小川晋史 編 『琉球のことばの書き方』、くろしお出版)に対応したフォントです。琉球諸語は標準日本語よりも音の種類が豊富で、日本語を読み書きするための文字だけでは十分に書き表すことができません。デジタル化の進む現在では、デジタルデータとして扱えるフォントがないことが、消滅危機言語である琉球諸語の記録・保存・継承をするための大きな障壁となりかねませんでした。そこで開発されたのがこの「しま書体」です。なじみのある「かな文字」に補助記号を合わせることで、研究者はもとより、琉球諸語を話す地元の人にとっても使いやすいフォントができあがりました。

多くの人とチームを組んだ開発プロジェクト

「しま書体」の開発は、小川 准教授が国語研のプロジェクトPDフェローだった当時に始めた「琉球諸語のための統一的表記法プロジェクト」に遡ります。山田 准教授や林研究員と共に、若手を中心とした琉球諸語の研究者と次々に連携していき、重鎮クラスの研究者も巻き込んで、最終的にこのプロジェクトには19名にも上る研究者が参加することとなりました。その後、トヨタ財団や電気通信普及財団の研究助成も受けながら、時間をかけて現在のプロジェクトに発展させていったそうです。

フォントデザイン設計、エンジニアリング、広報デザインは定評のある三社(それぞれ字游工房REALTYPE、coban.lab(上田寛人))とチームを組んだことで、美しく使いやすいフォントに仕上がりました。現在はUnicodeの登録準備を進めているそうです。

しま書体のフォント(一部)と補助記号
しま書体に搭載されているかなの一部と補助記号

「日本音声学会 学術研究奨励賞」とは

日本音声学会が音声学分野の発展を奨励することを目的として、2012年度に新設した賞です。音声学分野における優れた成果を表彰しています(詳細は下記のサイトをご覧ください)。

2018年度 日本音声学会 学術研究奨励賞

成果の名称:「琉球諸語の全方言を書くためのフォント開発」

応募者 : 小川晋史(熊本県立大学)
共同研究者 : 山田真寛(国立国語研究所)、林由華(日本学術振興会/国立国語研究所)
推薦者 : 青井隼人(東京外国語大学 アジアアフリカ言語文化研究所/国立国語研究所)

授賞理由

応募者が中心となって開発した「しま書体」は、琉球諸語の全方言を電子的に入出力することができるフォントである。従来の日本語書体のみでは琉球方言を書き表すことは難しく、デジタル化の進んだ現代社会においては、危機言語である琉球諸語の記録・保存・継承の大きな障壁となることが危惧されていた。

また、「しま書体」はフォントとしての汎用性・機能性・デザイン性も優れており、MacOS 環境であれば、一般的なアプリのほとんどで使用することができる。これらの成果の詳細については、昨年度全国大会、ワークショップにて発表され、参加者に大きなインパクトを与えた。応募者らのこれまでの地道な努力の上に、危機言語の記録・保存・継承や言語使用地域に貢献する大きな成果をもたらしたとして、学術研究奨励賞にふさわしいと判断した。

※ 日本音声学会(http://www.psj.gr.jp/jpn/psj_awards)より許可を得て転載

動画「消滅危機言語のための書体開発」(「ATypI 2019 TOKYO」講演)

A Typeface for Endangered Languages | Shinji Ogawa, Hiroto Ueda | ATypI 2019 Tokyo

2019年9月3~7日に東京で開催された「ATypI 2019 TOKYO」で、しま書体の開発経緯が発表されました。動画が公開されていますので、あわせてご覧ください(ATypI=エイタイプアイとは、タイプデザイナー、タイポグラファ―、グラフィックデザイナー、出版社などで構成される非営利団体国際タイポグラフィ協会です)。

しま書体の購入先

しま書体ロゴ

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