国語研の窓

第1号(1999年10月1日発行)

暮らしに生きることば

「時分どき」

研究所では、全国各地にでかけ、暮らしの中のことばを録音して研究に活用しています。

以下の会話は京都市中京区のKさん宅でインタビュー調査した時の一コマです。Kさんは大正2年京都生まれの女性です。

所 員 「じぶんどき」っていうことばはどういう意味ですか?
Kさん 「時分どき」って、食事の時分どきってことですよね。
所 員 食事の時間?
Kさん 時間ですね。お昼とか、夕方とかね。
所 員 それはどんなふうに使うことばなんですか?
Kさん そうですねぇ。お昼に差しかかってくるとね、それ言うて、みー(身)引くのが、エチケットどすわな。
所 員 なるほど。
Kさん そやなかったら、いつまででも座ってたら、お膳(ぜん)出さんならんことになりますしね。(笑い)
所 員 そういうときに「時分どき」ってことばを……。
Kさん そうどすな。「もう、時分どきやから、これで失礼さしていただきます」言うて帰らはります。
所 員 お客さんの方が言うことばですか?
Kさん ま、その時に、どうしても寄せてもらわんならん時やったら、「ご時分どきにすんまへん」とか言うて……。

この会話では、よその家を訪問した時の心配りが話題になっています。客の側では食事どきを避ける、また迎える側でも食事のもてなしを気にかける、そのような心配りが、「時分どき」ということばに込められています。

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。