国語研の窓

第1号(1999年10月1日発行)

事業の新展開:日本語教育センター

国内外の日本語教育に関する情報の収集と発信

佐々木 倫子 (日本語教育センター日本語教育指導普及部長)

国内の様々な地域で外国の方々を見かける時代になりました。留学生だけでなく、日本人と結婚した人々も、ビジネスマンも、技術研修生も、そして父母と共に来日した子ども達も、様々な人々が日本に住み、日本語を使っています。また、世界各国での日本語学習人口も増加の一途をたどり、国際交流基金の調査(1998年)では200万人を超えています。

日本語教育センターでは、平成11年度から、これまでの事業を拡大・統合した新しい事業を始めました。以下の5つの柱からなる新展開です。

1.日本語教育資料の収集と『日本語教育年鑑』の作成

日本語学習の支援を有効に行うために、日本語教育に関する研究論文、参考書、教科書、副教材、視聴覚教材などの資料を収集整理し、あわせて日本語教育事情の解説や関係機関一覧などを加えた『日本語教育年鑑』を発行することになりました。将来は、本の形だけでなく、CD-ROM、ホームページによる情報の提供も行う予定ですので、そちらもご利用いただければ幸いです。

2.日本語教育研究連絡協議会の開催

今後、日本語教育センターがどのような役割を果たすべきかについて、外部の方々の意見を伺う会を毎年持っています。

3.インターネットによる日本語教育研究ネットワークの構築

日本語教育センターでは、報告書などの各種印刷物の刊行や、研修会・講演会・シンポジウムなどの開催を通じて、研究成果を広くご利用いただけるように努めています。さらに、高度情報化時代を迎えて、ホームページによる公開、インターネット通信による日本語教育関係機関の連携をいっそう進める予定です。

4.国際共同研究のための外国人招へい

国際共同研究は、平成6年度に日英対照研究のためアメリカ人研究者を招いて始まりました。地域も米国、ヨーロッパ、中国と広がり、本年度は3名の外国人研究員を招いています。米国、ロシア、中国の日本語教育者・研究者との連携の中から、英語・ロシア語・中国語を母語とする人々の日本語学習をより充実させる成果が生まれることを期待しています。

5.世界の言語研究機関調査

国立国語研究所は、国の試験研究機関として言語施策に資するための基礎的な研究・事業を行っています。より広い視野で計画を立てるためにも、世界の国々のどのような機関で、どのような言語研究や事業が行われているかを把握していることが必要です。これまで世界47か国の主な言語研究機関の概要を把握しました。さらに詳しい内容調査を行い報告する予定です。

ますます多様化する日本語教育界を見据(す)え、情報の収集・整理・発信の大切さを強く認識しつつ、今後の事業を進めたいと考えています。

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。