国語研の窓

第2号(2000年1月1日発行)

研究成果の紹介:新プロ「日本語」

新プログラム「国際社会における日本語についての総合的研究」の研究成果

日本が経済的に発展し国際的な役割が大きくなるにつれて、学術的な研究はもちろん、文化・経済などいろいろな方面で日本語を通した国際相互理解の必要性が高まってきました。経済的進展の度合いは一時の勢いを失ってはいますが、日本および日本語を取り巻く国際化の傾向は依然として続き、日本語学習者の数は200万人を越えるまでになっています。今や日本語が日本人だけの、また日本語学的な視点からだけの研究対象であった時代は終わり、国際社会における日本語の使用実態を多角的に研究するとともに、日本語を国際的に一層流通させるためのあるべき姿を学術的に追及する時期に来ているといえましょう。しかしこれまで、この問題に正面から取り組んだ学術的研究はありませんでした。

幸い、文部省科学研究費補助金(創成的基礎研究費)から多額の経費をいただく機会を得ましたので、国立国語研究所が中心となった新プログラム方式による研究「国際社会における日本語についての総合的研究」(研究代表者:水谷 修)を行う運びとなりました(略称を『新プロ「日本語」』といいます)。この研究は、1994年4月から1999年3月までの五か年をかけて行われたもので、外国人も含めて百数十名の研究者によって、次のような四つの研究グループに分かれて実施されました。

■ 「日本語観国際センサスの実施と行動計量学的研究」(研究班1)
■ 「言語事象を中心とする我が国を取り巻く文化摩擦の研究」(研究班2)
■ 「日本語表記・音声の実験言語学的研究」(研究班3)
■ 「情報発信のための言語資源の整備に関する研究」(研究班4)

研究のまとまりごとに、各研究グループの成果を次号以下で数回にわたってお知らせする予定ですが、全体としての成果は次のようにまとめることができると思います。

これまで海外での日本語の位置や日本語のイメージについて、いろいろな人がいろいろなことを述べてきました。それらの多くは、限られた経験によるものであり、妥当な知見が得られている側面もありますが、どれほどの普遍性をもつのか定かではありませんでした。それに対してこの「日本語観国際センサス」は、日本語に関する地球規模での多角的・客観的な調査研究を実施したもので、それによってこれまでの所見に比べて実証的な確認を一歩前進させることができました。〔国際的に対応を要請される研究〕

従来の人文科学研究の領域では、実用的あるいは問題解決型の研究はきわめて稀(まれ)でした。本研究では、この方面に意図的に接近しようと試みたこともあって、社会のニーズに応(こた)えたり国や社会へ提言できる成果がいくつか生まれました。その成果のとりまとめができた部分については、新聞・テレビ・ラジオ等のマスコミで取り上げられ、その反響は少なくありませんでした。〔国民や社会のニーズに答える研究〕

日本語を地球規模で総合的にとらえる努力をした結果、日本語に関するこれまでの研究調査で知られていなかった多様で新しい膨大な調査資料が得られました。その収集・整理・分析段階を通して、今までの手法ではできない新しい研究法で立ち向かわなければならない作業に直面しました。その結果、新しい研究領域が育つ芽ができました。〔学問の新分野開拓〕

各研究班・各チームにおいて、研究を進めていく過程で、海外を含む人的ネットワークが作られ、新プログラム研究終了後にも継続および新規の共同研究を実施するための核ができました。〔研究体制の整備〕

まさに『創成的基礎研究』の名が示すように、新プロ「日本語」からはいくつか研究の芽が育ちました。このプロジェクト研究を起点として、さらなる研究の進展を誓うとともに、研究継続の成果が国立国語研究所、ひいては関係諸学界の発展に寄与できることを強く祈っています。

研究の成果は、これまでのシンポジウム、講演会や報告書などによって公表してきましたが、インターネットのホームページでも見ることができます。まだ未完成の部分もありますが、順次拡充していくつもりでいますので、国立国語研究所のホームページともどもどうぞご覧ください。

アドレスは  http://www2.ninjal.ac.jp/jalic/ です。

日本語観国際センサス調査実施国

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。