国語研の窓

第6号(2001年1月1日発行)

年頭の辞:新しい門出に際して

国立国語研究所長 甲斐睦朗
国立国語研究所長
甲斐睦朗

新年明けましておめでとうございます。
国立国語研究所を代表して21世紀最初の初春のごあいさつを申し上げます。

御存じのように国立国語研究所はこの4月から「独立行政法人 国立国語研究所」として新しく生まれ変わることになります。この再生あるいは移行によって何がどのように違ってくるかについてはまだ不明確な所があります。しかし、私どもの心がまえは確固としております。すなわち、日本語の環境は、国際化や国民の生活スタイルの変化などによって年々違いを見せています。そこで、創立から半世紀余りの間に築かれてきた伝統を継承しながら、新しい時代に応じた日本語研究の在り方を追求していく所存です。また、国民の皆様がお寄せくださる篤(あつ)い御期待にはぜひお応(こた)えしたいと考えております。

この2年余り、私どもは独立行政法人化に対処するために、創立以来の軌跡を検討し、新しい研究体制の検討に取り組んできました。幸いにも、関係機関の助力、全職員の気持ちのよい協力があって日本語研究の新しい取り組み方を確立することができました。ここでは、新しい国立国語研究所の在り方を、国民への普及・広報に絞って述べることにします。

私どもは、この2年間、電話による言葉相談の体制を設けて、全員が交代で応じるようにしてきました。ちょっとした言葉の質問によって研究員の問題意識が呼び起こされることもあります。この電話相談は、今後の積極的な展開を検討しています。次に、昨年から地域の方々を対象とした「ことばフォーラム」という催しを開いてきました。これは、研究員が言葉について、常々研究し、考えていることを、講演会やワークショップなどの形で一般の方々にわかりやすく伝えていこうとするものです。今後は、この「ことばフォーラム」の回数を増やすとともに会場を全国に広げることを計画しています。また、研究成果をわかりやすく解説した普及書や日常の言葉遣いに関する啓発書を刊行したり、ビデオ作品を編集したりして、国民の言語生活の向上に役立てたいと思っています。

新しい国立国語研究所は、日本語研究、日本語教育における世界の中核的機関としての役割を果たすことは当然として、言語生活上の問題解決に役立つ研究に取り組み、その成果を積極的に国民に発信していく所存です。どうぞ、これまでに増す御支援・御指導をお願いして、新年のごあいさつといたします。

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。