国語研の窓

第6号(2001年1月1日発行)

刊行物紹介

『日本語基本語彙 文献解題と研究』国立国語研究所報告116

B5判 340ページ 9,800円 明治書院

基本語彙は、教育や調査などを行う上で元になる言葉の集まりという意味で、国語教育、日本語教育、言語調査などの上で取り上げられています。この報告書は、日本で刊行された日本語の基本語彙の文献約200編から、愛児の語彙発達を6年間調査した『幼児の言語の発達』(1924)のように歴史的に貴重である文献、『教育基本語彙』(1958)のようによく活用されてきた文献、『日本語教育のための基本語彙調査』(1984)のようにこれからの基本語彙の選定に大切な文献、という見方で約120編を選定してその特徴を解説しています。たとえば、最初の文献は、今から80年前の大正8年に成城小学校が新入学児童の理解語彙を調査した『児童語彙の研究』で、児童全員が理解できた言葉として、約2,000語が掲げられています。

この報告書は、これらの文献に基づいて、日本の語彙調査がどのように開発され、どのように展開してきたかについてほぼ10年単位で説明しています。また、どういう立場や方法で調査が行われているかについても14種に分けて考察しています。

今後は、この報告書の指摘によって、新しい調査研究が開発され、また、データベースの作成が行われることが期待できます。

『日本語基本語彙 文献解題と研究』国立国語研究所報告116

『日本語教育映像教材 初級編「日本語でだいじょうぶ」解説書』

B5判 112ページ 1,890円 日本シネセル(株)

国立国語研究所日本語教育センターでは、外国人に対する日本語教育に役立てるため、1993年度から1997年度にかけて、ビデオ教材『日本語教育映像教材 初級編「日本語だいじょうぶ」』を作成しました。さらに、このビデオ教材本体を有効に利用するための関連教材として、これまでに『シナリオ集』(1996)と『語彙表』(1997)が刊行されています。

今回紹介する『日本語教育映像教材 初級編「日本語でだいじょうぶ」解説書』は、関連教材シリーズの最新刊として、2000年3月に発行したものです。この『解説書』には、映像に現れた伝達行動、事物、各場面で展開する談話構造などの記述が収められています。

伝達行動に関しては、談話の骨格をなす発話に対して、その発話が談話中で担う役割(「単位方略(タクティクス)」の種別)が付与してあります。たとえば、「○○さん、いらっしゃいますか」という発話でも、いるかいないかを尋ねているのであれば「情報提供の要求」、呼んでほしいという意図を含んでいれば「行為の依頼」というように、表現は同じものでもそれぞれの談話中での役割に応じた情報が付与されています。

また、映像教材の場合には、登場人物が手にしているもの、背景に見えているものなど、さまざまな周辺的な事物が目に入ります。それらの非言語的な情報からは、ときには日本文化の一端をかいま見ることもでき、日本文化紹介の糸口として活用することも可能です。

『初級編』を利用して日本語を指導する方々に、ぜひ活用していただきたいと思います。

『日本語教育映像教材 初級編「日本語でだいじょうぶ」解説書』

○その他の関連教材
『日本語教育映像教材 初級編「日本語でだいじょうぶ」シナリオ集』1,800円
『日本語教育映像教材 初級編「日本語でだいじょうぶ」語彙集』2,000円
○ビデオ教材本体
『日本語教育映像教材 初級編「日本語でだいじょうぶ」』全4ユニット(40セグメント)152,000円(ビデオ版)
※上記の発売元はすべて 日本シネセル(株)

また、日本語教育教材開発室では、このビデオ教材を利用した指導方法を考える会を定期的に開催しています。詳細については、下記の連絡先までお問い合わせください。

【連絡先】
国立国語研究所日本語教育センター日本語教育教材開発室
担当:福永由佳、植木正裕

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。