第6号(2001年1月1日発行)
平成12年11月11日(土) 国立国語研究所
今回のことばフォーラムでは、「分科会方式」という新しい試みに挑戦してみることにいたしました。ただ話を聞くだけではなく、参加者の方が自分で考えたことを積極的に発言できるように、全体を3つの小グループに分け、グループごとに設定したテーマにそって話し合いを進める、という形式です。
メインテーマは「日本語を学ぶ・日本語で暮らす」。最近日本でも、日本語を母語とする人としない人、また日本語を母語としない人同士が付き合い話し合う、という機会がめずらしくなくなってきています。文化的・言語的な背景が違う人同士が良好な人間関係を築いていくためには、まず相手の考え方・振舞い方をよく観察し、理解する必要があるのと同じく、自分自身の文化や言語についても改めて考え直してみることが必要です。
そのための手がかりとして3つの小テーマを用意し、それについてグループごとに話し合いを進めました。
各グループでは、以下のようなことをおこないました。
担当:井上 優ほか
ここでは、「のだ(んだ、んです)」を用いた文と用いない文の意味の違い(例えば、「私はカレーが好きです」と「私はカレーが好きなんです」、「中国のお酒っておいしいねえ」と「中国のお酒っておいしいんだねえ」)について、さまざまな角度から話し合いました。「のだ」の意味分析の入り口のところを少しのぞいただけでしたが、様々な意見が出され、「のだ」の奥深さをあらためて認識しました。
担当:能波 由佳ほか
国立国語研究所作成の『日本語教育映像教材 初級編 日本語でだいじょうぶ』を見ながら、この映像教材を使っていったい何が教えられるかについて話し合いました。同じ映像であっても見る人によってかなり違う情報を受け取っており、その解釈もいろいろであるということが体験できました。教育に映像を使うむずかしさ、おもしろさが浮き彫りになりました。
担当:石井 恵理子ほか
「雑巾」ってなに?「燃えるゴミ」ってなに?という、ごく常識的なことを聞いているように思われる問いでも、生まれ育った文化が違うと答えもかなり違ってきてしまいます。実は日本人同士の間にも少なからぬ違いがありました。いろんな文化背景を持つ人同士が一緒に語り合い、お互いの違いを改めて認識するとともに、このように違う人々同士がよりよくコミュニケーションをおこなうための工夫について考えました。
「分科会形式」という新しい試みは好評のようでした。参加者のみなさんからは、言いたいことがたくさん言えてよかった、いろんな人のさまざまな意見が聞けてよかった、という感想が寄せられました。
第4回「ことば」フォーラム:http://www.ninjal.ac.jp/archives/event_past/forum/04/
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。