国語研の窓

第10号(2002年1月1日発行)

第6回ことばフォーラム報告

「ことば」を調べる・考える

小林隆(東北大学大学院助教授)/田中牧郎(国立国語研究所員)・小河原義朗(国立国語研究所員)

2001年10月27日(土)午後2時~4時 艮陵(ごんりょう)会館(宮城県仙台市)
国立国語研究所 主催
仙台市教育委員会・NHK仙台放送局・仙台放送・TBC東北放送・東日本放送・ミヤギテレビ 後援

今までに5回を重ねたことばフォーラムですが,国語研究所の講堂から出かけての開催は,はじめてのことでした。当日は,約90名の参加者にお集まりいただきました。「『ことば』を調べる・考える」と題し,先に刊行した「新『ことば』シリーズ14・言葉に関する問答集─よくある『ことば』の質問─」(国立国語研究所編・財務省印刷局発行)に関連し,三つの話題で講演し,質問を受けました。

「ことば」を調べる・考える

「現代に生きる方言」 小林 隆

地元宮城県の方言を材料に,

  1. 現在,方言の消滅は急速に進んでいる。
    例:ニドイモ〔ジャガイモ〕・オレサマ〔カミナリ(雷)〕
  2. そのなかで生き残る方言もある。
    例:こわい〔疲れた〕・おしょすい(恥ずかしい)
  3. そればかりか,新たに生まれる方言もみつかる。
    例:ジャス〔ジャージ〕・いきなり〔非常に・とても〕

の,三つの話題を展開しました。ときに実際の方言調査の結果に基づき,また特に「ジャス」については,当日進行をお手伝いいただいたミヤギテレビアナウンサー部の吾妻秀謙氏の参加で,会場の参加者へのインタビューも交え,和やかに進行しました。

「漢字表との付き合い方」 田中 牧郎

幕末以来の漢字使用や漢字表の歴史を踏まえ,

  1. 現在行なわれている「教育漢字」「常用漢字」「人名用漢字」「表外漢字字体表」「JIS漢字」とは,それぞれどういう性格のものか。
  2. 国語研究所が調査している漢字使用の実態調査の結果にはどんなものがあるのか。
  3. 漢字表の抱える問題(例:かながき・交ぜ書き・ふりがなの問題)をどう考えればよいか。

などについて解説がありました。

「日本語教育から見た日本語」 小河原 義朗

日本人のための日本語という視点ばかりではなく,国際コミュニケーションの手段としての日本語という視点の重要性を示しました。具体的なデータを示しながら,次の三点を問題にしました。

  1. 日本語教育と国語教育とはどう違うのか。
  2. 日本語学習者は,どこでどう増えているのか。
  3. その日本語学習者のニーズとはどんなものか。

質問コーナー

方言の語源に関する質問,新聞やニュース報道で使われる漢字表記と常用漢字のかかわりに関する質問,日本語を勉強する人にとって,ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字といったいろいろな表記方法はどう受けとめられているか,といった質問がとりあげられ,講演者が回答しました。そのほかにも,辞書の利用や,語源の調べ方・考え方についての質問をとりあげ,解説しました。

(山田 貞雄)

質問コーナー

  第6回「ことば」フォーラム:http://www.ninjal.ac.jp/archives/event_past/forum/06/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。