第13号(2002年10月1日発行)
『方言文法全国地図』第5集が刊行されました(財務省印刷局刊)。たとえば,義務表現と呼ばれる「~しなければならない」を全国でどのように言うかを図のように見ることができます。
全国的に見られる水色は「~なければならない」の類です。橙(だいだい)色は「~なければいけない」,「~なければあかん」の類で,主に西日本にまとまって見られます。茶色を見ると,「ならない」にあたる青森のマエネ,岩手・宮城のワカラネー,千葉・岡山のオエネー・オエン,秋田・長崎のデキネー・デキンなど,地域特有の表現がわかります。沖縄には,「行けばなる」(赤色)のような「~なければならない」とは異なった表現方法をとる地域も見られます。
なお,この図は地図集に収録した地図を簡略にしたものです。地図集では,さらに詳しい様子が確認できます。
『方言文法全国地図』は第5集で,パソコンによる作図を実現させました。見た目には第4集までとの違いはわかりませんが,作業が大幅にはかどるとともに,将来にわたるデータ利用の幅がひろがりました。この略図もパソコンで作成しています。『方言文法全国地図』に関する情報は,ホームページ(http://www2.ninjal.ac.jp/hogen/dp/gaj_all/gaj_all.html)から見られます。第4集までのデータはすでに公開していますし,第5集についても準備が整いしだいデータやプログラムを公開する予定です。
第5集は,義務表現のほかにも,「~するな」にあたる禁止表現,「~したい」にあたる希望表現,あいさつ表現など15にわたる分野を扱い,65枚の地図を収めています。さまざまな角度から日本語の方言を見わたし,活用されることを期待します。(8ページに関連記事があります。)
(大西 拓一郎)
208図「(行か)なければならない」(義務表現)より
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。