国語研の窓

第13号(2002年10月1日発行)

刊行物紹介:「日本語教育ブックレット」

『日本語教育ブックレット1 多言語環境にある子どもの言語能力の評価』
『日本語教育ブックレット2 日本語教材と著作権』

(ともに2002年3月刊,実費500円)

国立国語研究所では,日本語教育に携わる人材の育成や日本語教育関係者のネットワーク構築を目指して,長期研修,短期研修,遠隔研修を柱に,各種研修を実施しています。その中でも,短期研修では日本語教育の多様化に直面している教師にとって必要と思われるテーマを扱い,知識や情報を提示しつつ,日本語教育におけるさまざまな課題について考えていただく機会を提供しています。

この短期研修の内容をより多くの方々に知っていただき,同時に教師用リソースとして保存・活用していただくため,『日本語教育ブックレット』シリーズは創刊されました。各巻はいずれも60ページ程度とし,簡便さを特徴の一つとしていますが,新しい情報,実践的な情報を盛り込んでいます。日本語教師のみならず,日本語学習者に関わる多くの方々に役立つ内容となっています。

『日本語教育ブックレット1 多言語環境にある子どもの言語能力の評価』
『日本語教育ブックレット2 日本語教材と著作権』

『ブックレット1 多言語環境にある子どもの言語能力の評価』では,学校教育における子どもの能力や到達度などの評価についての考え方の転換や新たな評価手法について述べ,近年,国内外で急激に増加している年少の日本語学習者を対象とした二種類のテスト(OBC,TOAM)の目的,観点等を紹介しました。この二つのテストは年少者のことばの能力評価や習得について,日本語の能力だけを一元的に見ようとするものではなく,母語あるいは第一言語の能力を配慮したものとして,今後の応用が期待されるものです。

また,日本語教育の世界では教師が教材を作成したり,新聞・雑誌・テレビ番組などを活用して授業を行ったりという工夫を日常的に行っています。最近は,インターネットを授業の中に取り入れる機会も増えてきました。テクノロジーの発達のおかげで豊かな教室活動ができるようになった反面,無意識に著作権を侵害したり,侵害されたりしている場合も多いようです。『ブックレット2 日本語教材と著作権』では,日本語教師が教材を作成および使用するときに必要と思われる著作権に関する基礎知識を具体的な事例をあげながら紹介しました。

以上の2冊はいずれも,参考となる文献やホームページなどを紹介し,ブックレットを入り口にして,次の段階に進むことができるよう工夫しました。ブックレットという名が示すとおり,小さい本ではありますが,今後も刊行を続け,日本語教育関係者にとって有益な情報を継続的に提供していきたいと考えております。

(金田 智子)

  日本語教育ブックレット:http://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/nihongo_kyouiku_booklet/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。