国語研の窓

第14号(2003年1月1日発行)

国立国語研究所「外来語」委員会・活動報告

第1回の「中間発表」を行いました

「外来語」の問題点

日本語でコミュニケーションを行っている私たちにとって,なじみのない,分かりにくい外来語が日常的に身辺を飛び交っていることは,とても困った問題です。特に,官公庁の公的な文書や多数の人を対象とする新聞・放送などに,このような外来語が次々に現れるとき,そこには放っておけないさまざまな問題が発生しているように思われます。

冷静に考えれば,外来語には,これまで日本になかった事物や考え方などを表現する言葉として,日本語をより豊かにするという優れた面もあります。しかし,その一方で,むやみに多用すると円滑なコミュニケーションの障害となり,私たちの日常生活をおびやかすような面も出てくるというわけです。

「外来語」委員会とは

そもそも,どんな言葉を使うのが適切かということは,その時々の相手や場面によって変わるべきものです。外来語を使うことについても,全く同じことが言えるはずです。

国立国語研究所では,このような認識に立って,咋年8月に「外来語」委員会を設置し,具体的に問題点の検討を開始することにしました。目的は,分かりにくい外来語について言葉遣いを工夫し提案することにあります。(設立の趣旨については,本誌13号に「設立趣意書」の全文を掲載しました。)

さらに,欲を言えば,この委員会の提案がきっかけとなって,より多くの人々がそれぞれの立場で,私たちの大切な日本語について考えていく機会が生まれることになればとも考えました。

委員会の活動

委員会の構成は,研究所の外部からの委員16名と内部の委員4名の計20名から成ります。外部委員の方々は,どなたも外来語をはじめ言葉の問題に,それぞれの立場から深い関心をもっておられる方々ばかりです。

委員会では,まず,国の省庁の行政白書を,その後は新聞や雑誌など公共性の高いものを対象に,一般に分かりにくい外来語が使われていないか,使われていれば,それに換えるべき分かりやすい言葉や表現にはどんなものがあるかを検討します。目指すところは,個々の外来語に対する考え方やその言い換え例を含めた,緩やかな目安・よりどころを具体的に提案することにあります。

第1回の中間発表

第1回の提案に向け,検討対象語は,原則として最新の国の行政白書に現れる外来語の中から,一般への定着が不十分と判断される約70語を選びました。語の選定と定着度の判定は,国立国語研究所のこれまでの調査研究をもとに,委員会が暫定的に行っています。また,文化庁国語課の協力を得て,対象とした外来語の一般への定着度を知るために,世論調査も実施しています。これにより,検討結果の妥当性をより高めることができます。

さて,委員会の設置から4か月余り,昨年末には一通りの検討を終えて,その結果を一度世の中に示し広く御意見等をいただくために,中間発表を行いました。内容は,研究所のホームページ上に全文を掲載して,メール,書簡,ファクシミリ等によって御意見をいただけるようになっています。(提案の一例として「インフォームド・コンセント」を下に引きます。)

インフォームド・コンセント
意味 治療の前に,医師は,病状や治療の内容につき十分に説明を行い,患者は,それを納得して同意すること。
言い換え語例 納得治療。
説明付与例 インフォームド・コンセント(医者の十分な説明と患者の同意)。インフォームド・コンセント(医療行為をめぐる十分な説明と患者の同意)。
用例 医療の受益者である患者の人権が尊重されねばならず自己決定のためのインフォームド・コンセントの重要性が認められている。(白書)
注記 原語の概念を過不足なく言い換えられる語はないが,患者の視点に立って言い換えることが望ましい場合は,「納得診療」がわかりやすい。概念の正確さを期す場合は,「インフォームド・コンセント」の語を,説明を付与して用いる。

この第1回提案の最終発表は,今年の4月に行う予定です。中間発表に対していただいた御意見と世論調査の結果を,適切に盛り込んだ内容にしたいと考えています。

(相澤 正夫)

  「外来語」言い換え提案:http://www.ninjal.ac.jp/gairaigo/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。