国語研の窓

第19号(2004年4月1日発行)

新「ことば」シリーズ17号

新「ことば」シリーズ17号 ことばの「正しさ」とは何か

国立印刷局/473円(税込み)

今号のテーマについて

「正しい日本語を使おう」「あのことば遣いは間違っている」という言い方をよく耳にします。しかし,ことばについて「正しい」とはどういうことか,きちんと決めることはなかなか難しい問題です。

今回刊行する新「ことば」シリーズ17号では,「ことばの『正しさ』とは何か」というテーマを取り上げ,様々な観点から解説と考察を加えました。

今号の内容

新「ことば」シリーズは,主として「座談会」「解説」「問答」という三つの部分からなっています。

座談会

「座談会」では,ことばの「正しさ」「適切さ」ということと日々向き合いながら仕事をされている方を3名お招きし,お話を伺いました。

お一人目の倉島節尚さんは,長年国語辞典の編集に関わってこられた方,お二人目の佐竹秀雄さんは,現代における表記や文章,ことば遣い等に関して分析をしてこられた方です。そして三人目の早野恵子さんは,「医療コミュニケーション」を専門とされているお医者様。患者さんから必要な情報を効率的に,かつ威圧感を与えないようにして上手に引き出すにはどうしたらいいか,日夜苦心なさっています。

座談会では,いま何が「適切」なことば遣いなのか,場面や話し相手のことを考慮しながら「その場その場で考えていく」ことの重要性が強調されました。現実場面での興味深い実例を交えながら話は進み,最後に,「日常生活の中で,ことばの『正しさ』というものとどう付き合っていくとよいか」,について,出席者の皆さんから提言が行われました。

解説

「解説」では,ことばの「正しさ」について,所内外の5名の執筆者が,異なる視点から説明を加えています(以下,所外執筆者のみお名前を挙げました)。

解説1「ことばの『正しさ』」とは何か」では,ことばの「本質」という視点から論じています。突き詰めて考えてみると,ことばの「正しさ」に絶対的な根拠はありません。しかし社会生活を円満に送るための約束事として,「正しさ」をきちんと決めておく必要が出てくるのだ,ということを述べています。

解説2「地域差・世代差・ことばの『正しさ』」は,屋名池誠さんに執筆をお願いしました。ことばの「正しさ」に対する考え方は,地域によっても世代によっても違います。自分だけをものさしにして「正しい・正しくない」の判断を行うことは不適当なのではないか,ということが述べられています。

ことばの「使い方」の適切さについて論じたのが解説3「日常生活でのことばの正しさ」です。例えばいきなり「百万円お貸し願えませんでしょうか」と言うことは,ことばの形としては正しく丁寧なものであるけれど,「頼み方」としては不適切と言えます。ことばの形だけではなく,その「使い方」についても配慮しよう,ということを呼びかけています。

解説4「教育現場で考えることばの正しさ」は,文字通り「教育」という視点からことばの正しさについて問い直しています。教育という場面では,ことばの「正しさ」を伝えることが強く意識されがちです。しかしそれだけでなく,「正しさ」にまつわる様々な問題についてきちんと考えることこそが言語教育では重要である,ということを述べています。

最後の解説5は,西江雅之さんに執筆をお願いしました。題目は「『文法書』のない世界での『正しさ』とは」。日本に暮らしていると,ことばの「正しさ」というものが,辞書や文法書の中にあるかのように思ってしまいがちです。しかし世界の大多数を占める無文字言語においては,そのような意味での「正しさ」というものは存在せず,ただ実際の脈絡に「そぐう」ことばであるかどうか,ということだけが重要となります。無文字世界の事情について知ることで,日本語の「正しさ」についても,いつもとは異なる視点から考え直してみることができると思います。

問答

このほか,ことばの「正しさ」について,日常生活の中で問題となりそうなトピックを18題取り上げ,質問応答方式で解説を加えました。

これらの記事によって,単に「何が正しいのか」ということを確認するだけでなく,そもそもことばの「正しさ」とは何か,という根本的なところを,改めて考えていただければ幸いです。

※近日刊行予定 お近くの書店に御注文ください。

(新「ことば」シリーズ部会)

  新「ことば」シリーズ:http://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/shin_kotoba_series/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。