国語研の窓

第21号(2004年10月1日発行)

暮らしに生きることば

東京の言葉

東京には,日本各地からの移住者が生活しています。そこで使用される言葉に着目すると,日本各地の方言の特徴が確認できます。

まず,東京の言葉には,関西方言と共通した形式が幾つか用いられていることがわかります。例えば,「マス」を用いた否定表現は,「見マシナイ」「行キマシナイ」ではなく,「見マセ」「行キマセ」となります。この「ン」は,関西方言に見られるもの(行かン=行かない)です。

このほかに,「白い」や「嬉(うれ)しい」に「ゴザイマス」がついた場合,「白ゴザイマス」「嬉シゴザイマス」ではなく,「白ゴザイマス」「嬉シュウゴザイマス」となります。このような言い方も,関西方言の特徴(白ウない=白くない)です。

このように現在使用されている東京の言葉には,関西方言の特徴が認められます。これは,東京の言葉が形成される中で,関西方言の影響が大きかったことを示しています。

次に,東京の言葉には,今日においても,日本各地の方言との接触が起こっています。その中でも,関東周辺部の方言の特徴が,若者を中心に用いられる傾向にあります。例えば,「いいジャナイカ」「雨ジャナイカ」を,「いいジャン」「雨ジャン」と言うことがあります。この「ジャン」は,静岡県から横浜,東京へ伝わったものと言われています。

また,最近では「見ヨウ」「起きヨウ」を「見るベー」「起きるベー」とするように,「ベー」が使われはじめています。この形式は,東北・関東方言の特徴として知られていますが,東京で近年多用される「ベー」は,北関東から入ったもののようです。

これらの例から,東京の言葉には,現在においても,日本各地の方言の特徴が取り込まれていることがわかります。その上,この傾向が若者に見られるのは注目すべきことです。

東京の言葉は,これまでと同様に,今後も他方言と接触しながら姿を変えていくと考えられます。その在り方を注意深く見守っていく必要があるように思われます。

(朝日 祥之)

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。