国語研の窓

第21号(2004年10月1日発行)

研究室から:e-Japan事業

e-Japan事業「ITを活用した日本語学習環境の整備と人材育成」

e-Japanとは?

平成6年8月2日,「高度情報通信社会推進本部」が内閣に設置されました。それから6年後の平成12年11月27日に「IT基本戦略」が策定され,11月29日に,「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(略称IT基本法)」が施行されました。これを受けて,平成13年1月6日,内閣に「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」が設置され,1月22日に「eJapan戦略」が, 3月29日に「eJapan基本計画」が策定されました。

そして,世界最先端のIT環境を日本社会に提供し,さらには世界への積極的な貢献を行っていくために必要な制度改革や施策を当面の5年間に緊急かつ集中的に実行していくことを目標に,次の重点政策5分野で様々な事業が進められています。

  1. 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
  2. 教育及び学習の振興並びに人材の育成
  3. 電子商取引等の促進
  4. 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
  5. 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保

※詳細は,http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/を御覧ください。

国立国語研究所のe-Japan事業とは?

国立国語研究所は,平成12年度よりインターネットで日本語教育情報や学習用素材を世界の日本語教育関係者が共有できる「日本語教育ネットワーク」(http://www.kokken.go.jp/nihongo) を運用しています。このネットワークの円滑な運用のためには,世界中のコンピュータでの日本語入力と印字の問題,相互利用できる電子化素材の作成の問題,相互利用に際する権利と責任の問題,素材の活用方法の問題など,解決を要する問題が多々あります。

そこで,前述の(2)教育及び学習の振興並びに人材の育成の分野で,高度情報通信ネットワーク社会の形成に関するeJapan事業予算を獲得し,平成14年度から17年度までの4年間,国内外の様々な日本語教育機関,団体や関係者の協力を得て,次の四つ課題を実施しています。

  1. コンピュータの日本語環境の整備
  2. 日本語・日本文化素材の開発・発信
  3. ITを活用した日本語学習効果の研究
  4. ITを活用した日本語指導能力の向上研修

平成14年度より,独自あるいは共同で開発した電子化素材やソフトを国内外の日本語教育現場に提供したり,ソフトや機器の教育利用方法についての研究を行ったりしています。

(1) コンピュータの日本語環境の整備とは?

国外の日本語教育関係者がインターネット上で日本語による情報の収集と発信を行うときの障壁の解消を図るものです。例えば,海外の日本語教育現場が抱える次のような問題の解消を目指します。

  • 電子メール交流での自国語と日本語の同時使用
  • 日本語フォントのないプリンタでの日本語の印字
  • 日本語入力機能のない海外のPCでの日本語によるデータベースの検索・抽出
  • チャット交流での自国語と日本語の同時使用
  • 字幕付動画やカラオケを含めマルチメディア教材を作成するときの自国語と日本語の同時使用

このために, フォントサーバの運用, WebIMEの開発,フォントやソフトの提供,操作や設定の巡回指導などを行っています。

(2) 日本語・日本文化素材の開発・発信とは?

素材は,国立国語研究所主体と,国内外の大学,団体,企業との共同という二つの形態で開発されています。

素材は,対照言語研究・比較文化研究・日本語研究といった研究の成果に基づく資料集と,日本語学習支援ツール・日本語教育実践情報・日本語教師支援情報といった情報集の二つで構成されています。これらは,教育利用の範囲で自由に活用できます。既に作成されている幾つかを例示します。

  • 漢字の属性情報集
  • 日本語コミュニケーション場面集
  • 母語別(5言語)の日本語音声訓練データ集
  • 字幕付動画やカラオケなどの作成マニュアル集
  • 世界(8か国)の初等中等学校教科書比較集
  • 学習用WebサイトやCD教材評価基準集
  • 日本の生活文化素材集
  • 日韓大学生のための言語文化生活素材集

※下に示したWebサイトから御覧になれます。

(3) ITを活用した日本語学習効果の研究とは?

コンピュータやインターネットを日本語学習に活用することで,学習者の学習意欲,言語知識,言語運用力等にどのような変化が見られるか,教師がどのように活用することが学習を促進するかについて,国内外の日本語教育現場の協力を得て,3年間にわたり調べています。

例えば,

  • 発声発語訓練のソフトで日本語音声を練習,指導することが,日本語学習者の発声発語にどのような影響を及ぼすか
  • 海外の日本語学習者にとって,日本とテレビ会議,電子メール,チャットで交流することがどのような学習動機の変化をもたらすか
  • 日本語学習者が日本語でホームページを作る,自分の日本語会話場面を字幕付き動画にする,日本の歌のカラオケを作り歌う,といった学習活動が日本語運用力をどのように伸ばすか
  • Webサイトで日本語を自己学習することは学習者のどのような力を伸ばすか

といったことを行っています。

(4) ITを活用した日本語指導能力の向上研修とは?

特別研修(国内6地域),基礎研修(東京),巡回指導(海外12地域)の三つの形で実施しています。対象は,現職日本語教師,学校教員,日本語教育専攻大学院生・大学生などです。

平成15年度は,「マルチメディア教材作成と素材の共有」というテーマで特別研修を,「コンピュータと新日本語教育」というテーマで12月下旬,東京国際フォーラムで基礎研修を開催しました。

※平成16年度については,下に示したWebサイトを御覧ください。

どうなる?

日本とのテレビ会議交流,多言語によるチャット交流,海外のパソコンで日本語教育情報を日本語以外でも検索・抽出,日本語フォントのない海外のプリンタでも日本語で印字,教師や学習者によるマルチメディア教材や教案データベースの作成,といったことが簡単に行えるようになります。

世界中で日本語教育実践情報が共有できるようになり,日本語教師による日本語教育の内容・方法についての国際共同研究が進むことでしょう。そして,世界の日本語教師の職務遂行能力の向上,日本語教育実践や日本語教育研究の質的向上につながっていくと考えています。

(柳澤 好昭)

 

―この事業の経過報告Webサイト―
※注意「現在こちらのサイトは閲覧することができません」
―この事業の経過報告Webサイト―

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。