国語研の窓

第23号(2005年4月1日発行)

刊行物紹介:新「ことば」シリーズ18

『新「ことば」シリーズ18号 伝え合いの言葉』

国立印刷局/473円(税込み)

今号のテーマについて

毎日の生活の中で,私たちは言葉を使って,人に用件を伝えたり,人と良好な関係を作り上げたり,言葉で表現や創作を行ったりしています。相手と何かを伝え合い,通じ合うために,言葉は重要な役割を果たしています。

社会生活を送っていく上では,様々な人々とのコミュニケーションにおいて,どのように表現を工夫して伝達効果をあげるか,多様化するメディアをどう利用するかなど,一人一人が状況に応じて判断し,言葉を使っていく姿勢が必要です。

新「ことば」シリーズ18号では,「伝え合いの言葉」というテーマを取り上げ,様々な観点から解説や話題提供を行いました。

今号の内容座談会

座談会

「座談会」では,3人の方にお集まりいただき,「言葉で伝え合う」ということについて,お話を伺いました。

まず沖裕子さんは,談話行動が日本の諸地域によってどのように異なるかについて研究をしてこられた方,次に箕口雅博さんは臨床心理学のお立場からカウンセリングや異文化共生の支援に携わってこられた方,そして米川明彦さんは,俗語・集団語,手話,聖書という三つの柱から成る研究活動を通して,様々な角度から「通じ合うこと」を研究してこられた方です。

座談会では,口頭言語や手話,表情・身振りなど,コミュニケーション手段の様々な形について,そしてそれらを用いた表現の特徴や工夫についてのお話が出ました。また,自分が発信するだけでなく,相手の言葉を引き出し,受け止めて,よりよく分かり合うことの大切さについても話し合っていただきました。そして,人々が共に生きる社会の実現に必要な「伝え合う能力」とはどのようなものか,そのためにどのような「伝え合いの言葉」を育てていくべきか,提言を頂きました。

解説

「解説」では,言葉による伝え合いについて,所内外の執筆者が異なる視点から説明を行っています(以下,所外執筆者の方のみお名前を挙げました)。

解説1「言葉で人とかかわり合う」では,言語伝達の諸機能をもとに,言葉による人への働き掛け,人との関係作り,発達するメディアと言語伝達との関係について総論的に述べています。

解説2「行動に展開する表現〉におけるコミュニケーション上の工夫」は,蒲谷宏さんに執筆をお願いしました。この解説では,依頼,勧め,誘いなど,幾つかの働き掛けを取り上げて,伝達の姿勢や表現上の工夫について説明しています。

解説3「様々な関係の中でのコミュニケーション」では,所内執筆者との共著の形で,オストハイダ・テーヤさんに執筆をお願いしました。日常生活で出会う多様な関係において,どのようにコミュニケーションを行い,より良いかかわり方を見つけていくかについて解説しています。

解説4「メディアを介した「伝え合い」」では,三宅和子さんに執筆をお願いしました。最近発達してきた新しいメディアについて,そこでのコミュニケーションの特徴を紹介し,メディアの多様化の中で発信する主体としてどのようなことを考えていくべきか,解説しています。

言葉に関する問答集

このほか,言葉による伝え合いについて,日常生活で経験すると思われるトピックを17題取り上げ,質問応答方式で解説しました。

これらの記事が,人と人との伝え合い,言葉による人間関係の構築,言語コミュニケーションのより良い在り方について考えていただくきっかけとなれば幸いです。

『新「ことば」シリーズ18号 伝え合いの言葉』

※政府刊行物サービスセンター,官報販売所で販売。書店でも注文できます。

(新「ことば」シリーズ部会)

  新「ことば」シリーズ:http://www.kokken.go.jp/kanko/shin_kotoba_series/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。