第24号(2005年7月1日発行)
本年4月1日,甲斐睦朗前所長のあとを引き継ぎ,国立国語研究所長の任に就きました。これまでちょうど30年間,本研究所に在籍し,かつての言語行動研究部や現在の日本語教育部門で研究に携わってきた者です。
国立国語研究所が立川市の新庁舎に移転して,すでに5か月たちました。その間に年度も改まりました。研究所員一同,新しい環境に感謝の思いを抱きつつ,それぞれの職責を果たすために気を引き締めて新年度の仕事を進めております。
そのような時期に所長の責務を担い始めました。私の務めは,端的に申し上げれば,「言語生活」研究という国立国語研究所の大黒柱を,立川の新庁舎に移し,きちんと据え付けることだと考えています。
「言語生活」研究,つまり,言葉が実際の暮らしの中で使われる姿を科学的な目で見つめること,それを土台にして,日本語で暮らすすべての人々の言葉の暮らしに役立てていただける成果を挙げることが,研究所の任務の中心です。
現在,日本社会では国際化や高度情報化が一段と進んでいます。日本語による言語生活はますます多様な姿を見せています。日本語の将来像を考えるために,様々な人々の様々な言語生活の姿をきちんととらえることが欠かせません。
確実な調査研究とその成果を踏まえて,日本語による言語生活の「一歩先」を照らし出し,あるべき将来像を考える確かなよりどころを示すこと。この任務を最善の努力で担うことを通じて,研究所は,世界で唯一の専門研究機関として,日本語による言語生活に関する調査研究の中核・拠点の役割を果たしたいと強く願います。
所長の任に就いた者として,研究所の役割と責務を改めて以上のように確かめ,仕事を始めております。所員ともども,これまで以上に御支援と御指導をいただきますようお願い申し上げます。
独立行政法人 国立国語研究所長 |
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『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。