第27号(2006年4月1日発行)
(国立国語研究所「外来語」委員会)
役所や報道機関などが,不特定多数の一般市民に対して情報を伝える公共的な媒体で,分かりにくい外来語を多用することが,円滑な伝え合いの支障になっています。「外来語」委員会では,この問題を解消するために,分かりにくい外来語を言い換えたり説明を付けたりする,分かりやすく伝える表現の工夫を提案してきました。平成18年3月に,4回目の検討結果として35語を発表し,これと合わせて,平成15年から提案を重ねてきた4回分176語について,「総集編」を公表しました。
この提案は,白書や広報紙,新聞でよく使われる外来語について,国民約2,000人に対して理解度の調査を行い,理解度の低かったものを対象にしています。下に示した「リデュース」の提案例のように,見出し語の後に星印で,理解度の段階を示しています(この場合は,理解度は最低段階の25%未満です)。
公的な場面で情報を伝える立場にある人が,分かりにくい外来語一つ一つにどのように対応すれば,分かりやすく伝えることができるのか,そのための工夫や,知っておくと役に立つことがらを整理して掲載しました。
日本語として使われる場合に最も適切な言い換え語を示し,実際の具体例に則して言い換えを試みることができるように用例を添えました。また,外来語に説明を付ける場合に使える簡潔な意味説明を提示しました。「リデュース」の場合は,英語reduceの「減らす」という意味のうち,ごみになるものの発生を抑制することを表す,環境分野の専門語として日本語に取り入れられました。その背景には,国の政策を中心とする動きがあり,関連概念を表す外来語とともに,「リデュース」が使われています。こうした事情についても解説し,公的な情報伝達の場で,概念整理を行った上で,表現を工夫することができるように配慮しました。
この総集編は,研究所ホームページに掲載しているほか,平成18年6月に「分かりやすく伝える外来語言い換え手引き」(ぎょうせい)として,出版も予定しています。
(田中 牧郎)
「外来語」言い換え提案:http://www.kokken.go.jp/gairaigo/
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。