国語研の窓

第28号(2006年7月1日発行)

刊行物紹介:『分かりやすく伝える 外来語言い換え手引き』

国立国語研究所「外来語」委員会編/2006年6月/ぎょうせい/税込1,600円

伝わらない外来語

多くの人々に情報を伝える場面では,分かりにくい言葉を多用するわけにはいかないはずです。しかし,国立国語研究所の調査によれば,公共性の高い印刷物などには,一般の人々にとってなじみの薄い「外来語」が多く使われています。読み手の分かりやすさに配慮せず,書き手の使いやすさを優先しているように見えます。

自分の身の回りでは当たり前のように思われる言葉が,世代や関心を異にする人にとっては分かりにくい場合があることには,案外気付きにくいものです。また,分かりにくい言葉だと気付いても,それにどのように対応すれば分かりやすくなるのか,書き手が当惑する場合も多いようです。

外来語を分かりやすくする工夫の提案

このような現状を打開しようと,国立国語研究所「外来語」委員会は,一般の人々にとって分かりにくい外来語を一つ一つ取り上げて,言葉遣いをどのように工夫すれば分かりやすくなるのか,具体的な提案を重ねてきました(「外来語」言い換え提案―分かりにくい外来語を分かりやすくするための言葉遣いの工夫―)。平成14年8月に委員会が発足して以来,平成18年3月まで,4回に分けて提案を行ってきた外来語は,全部で176語になりました。

『分かりやすく伝える外来語言い換え手引き』

この176語について,この3月に「総集編」を公開しましたが,その内容をもとに,『分かりやすく伝える 外来語言い換え手引き』という本を作り,このほど刊行しました。分かりやすい表現を必要とする幅広い分野の方々に活用していただければと思います。

言い換えや説明方法のほか様々な情報を提供

国民を対象とした世論調査の結果に基づき,個々の外来語の理解度の段階を★印で示し,最適な【言い換え語】とその【用例】,説明を付ける場合に用いるとよい【意味説明】を示し,文脈や場面によって言い換え語を使い分ける場合の【手引き】なども詳しく記しました。

言い換えや説明方法のほか様々な情報を提供

委員会の苦心や調査結果の解説も掲載

この提案を行うために,委員会では様々な調査結果に基づいて議論を重ねてきました。委員会の苦心や,調査結果の解説なども,読み物としてまとめて掲載しました。

  • 「外来語」言い換え提案の現場
    分かりにくい外来語はどの分野に多いか
    言い換え語を絞り込む苦心
    「外来語」言い換え提案に寄せられる意見
  • 外来語の実態―調査と解説―
    外来語の比率とその増加
    外来語の定着度の多様性
    外来語と和語・漢語との使い分け
    外来語と言い換え語の分かりやすさ ほか

 

『新「ことば」シリーズ19』とも関連

この本と関連する内容の別の刊行物に,国立国語研究所編『新「ことば」シリーズ19外来語と現代社会』(平成18年3月,国立印刷局,税込483円)があります。現代社会に生きる私たちは,外来語とどう付き合っていけばよいのかという立場で,より広い話題をまとめた小冊子です。あわせてお読みくだされば幸いです。

(田中 牧郎)

   「外来語」言い換え提案:http://www.kokken.go.jp/gairaigo/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。