第31号(2007年4月1日発行)
30回「ことば」フォーラムが,2007年2月24日(土)の午後,国立国語研究所2階講堂で開催されました。参加者は140名でした。
前半は次の3件の講演がありました。
(1)朝日新聞社校閲センターの福田亮氏は「新聞記事の外来語」について,新聞で使用された外来語の現状を中心に述べられました。なかでも,「新語・新用法の定着するまで」,「現れては消えていく外来語」での,見落とされがちな外来語の生態という視点は新鮮でした。また戦前から現在までの「朝日新聞の外来語使用に対する態度」では新聞社の表記上の配慮に関する報告がありました。
(2)伊藤雅光は「雑誌に見られる外来語と外国語」について,研究所の語彙(ごい)調査データに基づいて,外来語と外国語の過去と現在の比較データを紹介し,さらに将来の状況について考えました。この40年間における雑誌の外来語と外国語の増加率はめざましく,将来この傾向が助長されるであろうことを予想し,外来語だけではなく,外国語に対しても今のうちに目配りをしておく必要性について述べました。
(3)NHK放送文化研究所の塩田雄大氏は「放送における外来語の過去と現在」について,放送における外来語使用の規範と実態の変遷について説明されました。規範では昔は個別に指定していたものから,理念の提示,そして言い換え案の提示という, 柔軟な方式に変化してきていることが指摘されました。また,実態では外来語表記の変化とアルファベット語の増加の問題について取り上げられました。
フォーラムの後半に行われた参加者との質疑応答では,「外来語表記のユレと変化」や「タテ書き・ヨコ書きとアルファベット語増加の関係」などの質問が多く寄せられ,外来語と外国語に対する関心の高さがうかがわれました。講演者が質問への回答と解説を行い,「外来語表記の規範意識の変化」などをテーマにディスカッションをし,議論を深めることができました。
(伊藤 雅光)
第30回「ことば」フォーラム:http://www.kokken.go.jp/event/forum/30/
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。