国語研の窓

第31号(2007年4月1日発行)

連携大学院プログラムの発展を目指して

連携大学院プログラムの発展を目指して~海外日本語教育セミナーの開催~

国立国語研究所では,政策研究大学院大学,国際交流基金日本語国際センターとの連携大学院プログラム「日本語教育指導者養成プログラム(修士課程)」及び「日本言語文化研究プログラム(博士課程)」を平成13年10月より実施しています。

海外で活躍する日本語教育指導者を対象とする,このプログラムは,これまでに16か国43名の修了生を輩出し,各地の日本語教育において指導者的な立場となる人材を育成してきました。

プログラムの一層の発展を目指し,昨年11月にウズベキスタン共和国において「日本語教育セミナー」を連携3機関共同で開催し,広報活動と修了生の追跡調査を実施しました。

NIS諸国における日本語教育

NIS諸国では,カザフスタン共和国,キルギス共和国,ウズベキスタン共和国,ウクライナに7名の修了生が活躍しています。また,これらの国からの応募者も増加傾向にあります。

NIS諸国における日本語教育は,ソ連崩壊後の教育の自由化に伴い,ほとんどの機関が1991年以降に開始しています。カザフスタン共和国など,中央アジアの国々では,多くの国立大学に日本語主専攻コースがあり,
初等中等教育機関にも日本語教育の裾野が広がっています。

ウクライナにおける日本語教育は,19世紀にまで遡る(さかのぼる)そうですが,本格的な日本語教育は,最高学府であるキエフ国立大学東洋学部の日本語学科開設(1990年)に始まるといわれています。

首都キエフだけではなく,地方都市でもそれぞれ独自に日本語教育が行われています。

これらの国々では,中央アジア日本語弁論大会や全CIS(Commonwealth of Independent Statesの略,
ロシア連邦及びNIS諸国)日本語弁論大会を共同で開催しており,国を越えた日本語教育のネットワークを通じて情報や意見の交換が行われています。

ウズベキスタンの日本語教室の掲示物
ウズベキスタンの日本語教室の掲示物

日本語教育セミナーの開催

今回の日本語教育セミナーは,在ウズベキスタン日本国大使館,ウズベキスタン日本語教師会,ウズベキスタン日本人材開発センターの協力を得て,11月3日と4日の2日間にわたり,首都タシケントで開催されました。セミナー初日は連携大学院プログラム及び連携機関の紹介,2日目は連携大学院プログラムの教官2名による講演及び修了生2名の研究発表を行いました。

セミナーには,ウズベキスタン共和国及び周辺国の日本語教育関係者,連携大学院プログラムへの参加を検討している方々及び修了生の合計約50名の参加者がありました。連携機関の活動についての紹介,修了生の現状報告・研究発表など,多角的な情報を提供することによって,文章では伝えられない,プログラムの特色を理解していただくことができたようです。質疑では,現地の日本人教師からもプログラムへの期待の声が聞かれました。

日本語教育セミナーの講演に耳を傾ける参加者

日本語教育セミナーの講演に耳を傾ける参加者

セミナーに前後して,周辺国における修了生の追跡調査を行いました。機関により事情は様々ですが,専門性の高い教師の不足,外国語教育学分野の研究の遅れ,等が共通の問題として指摘されました。連携大学院プログラムにとっても,これらの問題への対応が今後の課題のひとつとなるでしょう。

なお,本プログラムに関する詳しい情報は,国立国語研究所のホームページに掲載されています。

(福永 由佳)

連携大学院:政策研究大学院大学/国際交流基金日本語国際センター:http://www.kokken.go.jp/katsudo/daigakuin/01/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。