第33号(2007年10月1日発行)
国立国語研究所の中期目標には,「現代日本語の専門研究機関として積極的貢献を果たすための内外関係機関との連携協力」ということが記されています。海外との連携としては,次のことを行っています。
国際シンポジウムについては,これまでも「国語研の窓」で紹介されているので,以下では1~3について紹介します。
注目すべき研究を行っている海外の研究者が,国語研究所で研究を行うとともに,研究員との意見交換を行うものです。今年度は,マルコ・バローニ氏(イタリア・トレント大学)を招へいし,コーパスに基づく語彙研究,特に日本語の語彙における意味の構造化のあり方(semantic space)について講義を行っていただきました。
研究員が海外の研究機関に滞在し,研鑽を積むものです。今年度は,研究開発部門の小磯花絵研究員がアメリカ・コロンビア大学に滞在し,Julia Hirchberg 教授のもとで,会話のスタイル,特に話者交替に関する日英対照研究を行いました。
国立国語院キム・ドクホ研究官の講演会
現在,韓国の国立国語院(ソウル市),中国の北京日本学研究センター(北京市),華東師範大学(上海市)の三機関と学術交流協定を結び,報告書等の交換,研究員の相互訪問,シンポジウム参加などの交流を行っています。
国立国語院は,韓国語及び韓国国民の言語生活に関する科学的な調査研究と言語政策の立案を行う政府直轄機関です。以前は国立国語研究院という名称でしたが,2004年に拡張・再編され,国立国語院となりました。言語政策部,言語生活部,言語振興教育部の三部門から成り,代表的な刊行物に『標準国語大辞典』があります。
交流機関と研究報告書・資料等を交換
北京日本学研究センターは,日本研究及び日本との交流に携わる人材の養成のために,1985年に日中合作事業として設立された教育研究機関です。前身である「在中国日本語研修センター」(1980~85年)から数えると四半世紀以上の歴史を持ち,中国の日本研究の拠点として重要な役割を担っています。
華東師範大学は,中国の重点大学の一つで,幅広い分野に関する教育と研究が行われています。中国における日本語教育の中心の一つでもあります。
海外の研究者や研究機関との連携協力は,「自らの研究レベルの向上」,そして「海外の日本語研究の支援」という二つの点で非常に重要です。世界で唯一の現代日本語の専門研究機関として,海外の研究者や研究機関との連携協力の重要性は,今後ますます増すことになるでしょう。
(井上 優)
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。