国語研の窓

第35号(2008年4月1日発行)

暮らしに生きることば

日本語の達人てどんな人?

「日本語の達人」というとどのような人を想像するでしょうか。難しい漢字をたくさん知っている人,言葉遣いの美しい人,文章の巧みな人,多くの情報を短時間で読みこなす人,いつも必要十分で心地よいコミュニケーションの取れる人,聞き上手な人…さまざまな人物像が浮かびそうです。

このようにさまざまな「達人像」が描けるのは,日本語そのものにも,日本語の使われ方にもいろいろな側面がある上に,その中の何を特に大切なものと捉えるかが人によって違うことによると考えられます。

国立国語研究所では,このように多面的で考え方も多様な,日本人の日本語の力,すなわち「国語力」に関して,国民がどのように捉えているかを探るための調査(「国語力観」調査)を行いました。対象は15歳以上の国民約2,000人,実施は平成18年でした。

この中で,いわば「達人像」にあたる,「「国語力がある人」と感じるのはどんな人か」をたずねたところ,「考えをまとめてきちんと文章を書ける人」(54.9%),「文章を読んで内容を的確に理解できる人」(43.2%)が上位を占めました。文章を書く・読むという書き言葉に関する力が重視されています。

一方,少し質問の角度を変えて,「あなたが毎日の生活の中でしたいこと」をたずねると,「考えをまとめてきちんと文章を書きたい」(41.5%)はやはり1位ですが,「上手に話して説明したり発表したりしたい」(31.7%),「言葉でのコミュニケーションを通じてよい人間関係を作りたい」(30.9%)が続きます。自分のこととなると,今度は,話し言葉を含めた発信の言語活動がクローズアップされることがわかります。

「国語力」ということを考える上では「どのような立場からどのような側面に光を当てて捉えるか」を意識することが,重要であると考えさせる結果です。

ところでこの調査では,「国語力」を100点満点で自己採点してもらいました。平均点は47点(みなさん謙虚なのでしょうか)。読者の方々の自己採点はいかがですか。その時,どんなことを重視して採点しましたか。

(三井 はるみ)

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。