国語研の窓

第37号(2008年10月1日発行)

半世紀に渡ることば遣いの変化に迫る―第三次岡崎調査―

3回目の岡崎調査

国立国語研究所は,創立の翌年にあたる昭和24年から,全国各地でことば遣いの実態を明らかにする調査を企画・実施してきました。地域社会やそこに住む人がどのようなことば遣いで生活を営んでいるのか,また,社会環境や性別・年齢といった属性の違いがそのことば遣いにどのように影響しているのかを調べるための調査です。

その調査の一つに,愛知県岡崎市での敬語と敬語意識を調べる調査があります。岡崎調査は,昭和28年(1953年)に1回目,昭和47年(1972年)に2回目の調査を実施しています。

敬語を含めたことばの使用には社会的条件が関係しています。社会条件の複雑すぎる大都市でもなく,また農村のような比較的単純で,特殊な条件を持っている可能性のある地域社会でもない中小都市として,岡崎市が選ばれました。

1回目から55年が経った今年,半世紀に渡ることば遣いの変化に迫るべく,3回目の調査を計画しています。

ことばの使い分けの実態と意識に迫ります

人はことばを使い分けて生活を営んでいます。相手との関係(年齢,性別,役職など)や,どんな内容の話をするのか,どんな場所・状況で話をするのかといった条件が複雑に絡み合って,ことばを使い分けているのです。では,人はなぜことばを使い分けようとするのでしょう。それは,「この人に対しては,こんなことば遣いをするべきだ」のような信念や,「相手には,こういうことば遣いをしてほしい」などの願望といった意識があるからです。

このことばの使い分けの実態と意識に迫るために,岡崎調査では,以下に挙げる五つの調査を計画しています。

ことばの使い分けの実態と意識に迫ります

経年調査継続調査は,場面によることばの使い分けを中心とした同じ内容の調査です。

経年調査は,昭和28年の1回目,昭和47年の2回目の調査に協力していただいた方に再度お願いする調査です。継続調査は,今回新たに選んだ方にお願いする調査です。調査地域に居住する15歳~79歳の岡崎市民800名を,無作為抽出というくじ引きのような統計学的な手法で選びます。どちらの調査も,記入式のアンケート調査と,ご協力いただく方と調査員が対面式で行う面接調査の二つで構成されています。

ことばを使い分けるという行為は,話しことばに限ったものではありません。文字の選択もまた,ことばを使い分けることになります。岡崎市の幹線道路や商店街の看板・掲示物などで使い分けられる文字を調査するのが文字景観調査です。また,基盤調査とは,岡崎市生え抜きの年配の方に,昔ながらの岡崎のことばについて聞き書きする調査で,ことばの使い分けの実態をより詳細に描き出すことを目指しています。集団型調査とは,経年調査・継続調査にご協力いただいた方や中学生・高校生に,特定の場所に集まっていただき,ことばの使い分けに対する意識を尋ねる調査です。

この5つの調査研究を複合させ,複雑なことばの使い分けの仕組みを解明することが研究目的です。

今年度は経年調査と継続調査を実施します

基盤調査と文字景観調査は既に昨年度から調査を開始しています。今年度は,11月に経年調査と継続調査を実施します。調査にご協力いただく方には,事前に調査協力のお願いと記入式の調査票を郵送します。その調査票を,国立国語研究所の研究員のほか,国内の大学教員,大学院生が調査員となって受け取りにまいります。その際,調査員との面接調査にもご協力いただくことになります。半世紀に渡ることばの変化に迫る,世界でも類を見ない学術的な調査です。なお,集団型調査は来年度,実施予定です。

岡崎調査をよりご理解いただくために

岡崎調査への理解を深めていただくために,岡崎市の広報紙や各地区の回覧板での連絡,掲示板でのチラシ掲示を計画しています。また,10月には岡崎市にて「ことば」フォーラムを開催する予定です(p.8参照)。

岡崎調査の詳細な活動の情報は,国立国語研究所の岡崎調査ホームページ(http://www.kokken.go.jp/okazaki/ | http://www2.ninjal.ac.jp/keinen/)に掲載しています。調査の概要や計画,岡崎調査の企画・実施に向けた研究メンバーの情報,学会での研究発表・ワークショップ・学術論文等の研究成果も掲載しています。また,3回目の調査結果についても,準備ができ次第,順次掲載していく予定です。是非ご覧ください。

(朝日 祥之・阿部 貴人)

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。