第38号(2009年1月1日発行)
「言語生活の研究法:方言と文字」をテーマとする平成 20年度公開研究発表会が,12月19日(金)午後,国立国語研究所で開催されました。参加者は75名。まず,所長の杉戸清樹から挨拶があり,当研究所は今年で創立60周年をむかえたこと,創立当初から一貫して「言語生活」が当研究所の中心的課題の一つであったことなどが紹介されました。続いて,趣旨説明が横山詔一からあり,次の2件の研究発表が行われました。
(1) 高田智和が「文字の研究法―漢字字体研究の対象と方法―」について解説しました。戸籍文字など6万字におよぶ行政用文字の調査研究にもとづいて,【1】「同じ字」と「別の字」を判別するために,字種,字体,字形の階層関係を意識する必要があること,【2】辞書にない文字を同定する研究法として,たとえば地名由来の文字については,現地の課税台帳や地籍帳の調査が必要なほか,看板などの景観調査も有効であること,などを報告しました。
(2) 三井はるみが「方言の研究法─体系と多様性をめぐって─」について解説しました。全国規模での文法事象の分布図である『方言文法全国地図』の「順接仮定条件表現」を取り上げ,方言文法体系の多様性を把握するための研究法について,【1】全国における分布状況の概観と結果の整理,【2】青森県津軽方言「バ」や佐賀方言「ギー」といった特定方言で観察されるそれぞれに特徴的な仮定条件表現を中心とした体系記述の試み,などを報告しました。
最後に質疑応答があり,好天に恵まれた冬の夕日に包まれながら会を閉じました。
(横山 詔一)
平成20年度公開研究発表会:http://www.kokken.go.jp/event/koukai_kenkyu/20/
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。