第39号(2009年4月1日発行)
平成20年度までは「国民一般からの言葉に関する電話質問等への対応を実施する。」(中期計画)として,情報資料部門電話応対グループが質問に対応し,その様子を記録・蓄積するとともに,ウェブ上(国立国語研究所「日本語情報資料館」)に「言葉の質問室」というサイトを開設していました。現在はいわゆる「FAQ」(よくある質問とそれに対する回答)に絞って掲載しています。ここでは,これまでのグループの活動状況について報告します。
日々の質問応対では,以下の点を基本としていました。
(1)「ことば(国語・日本語・言語)」の質問
(2)「ことば」の科学の立場からの回答・対応
(3)質問者と質問内容の二面から記録を蓄積
これに加えて,回答内容の再利用(すでに行った回答の中から,どういう内容が利用できそうか,また実際に何を利用したか。)と参考資料(答える時にどういう資料を参考に用意したか,また実際に何を提示したか。)に関する情報の整備や,記録の拡充をすすめました。蓄積した記録を有効に活用するとともに,回答自体の均質化を図るためです。
さて電話対応件数は,5年前と比較すると,約1.5倍に増えています。
近年5年間に,どういう人が質問をしているのか,を見てみると,役所・学校,マスコミを含む組織からの質問は4割で変わりませんが,当初半数近くだった個人の質問者が,半数を超え,増加傾向にあります。一方,特にマスコミ関係の中でも番組制作関連の質問が,一時期非常に増加したことがあります。
質問内容は,語彙用法に文字表記が続き,合わせて半数以上になります。これには年度ごとの変化はありません。ただし「ことば」に関する質問内容は多方面にわたり,複雑なので,単純な分類は不可能です。「外来語に関する質問」といった別の視点を設けると,2007年の「外来語言い換え提案」の終息とともに質問数の沈静化が見られるようです。一方外来語に関する質問の内容面をみると,質問全体と同様に,語彙用法と文字表記が拮抗していて,それらを合わせると4割になります。またさらに語源由来を加えると全体の7割を超える,というのも質問全体の傾向と同様です。外来語については何をききたい,といった格別の傾向はない,ということが分かります。
文化審議会答申「敬語の指針」が出された平成19年以降,外来語同様に「敬語に関する質問」といった視点から観察してみる必要もあるようです。「ことば」の質問にあらわれる問題は,国語施策や社会における国語問題への意識や関心と関連づけられるものかもしれません。
(山田 貞雄)
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。