国語研の窓

第39号(2009年4月1日発行)

刊行物紹介:『新「ことば」シリーズ22「辞書を知る」』

新「ことば」シリーズは,世の中で関心の高い言葉の問題を取り上げ,専門家による的確で分かりやすい解説を加えた一般向けのブックレットです。今回のシリーズ22では「辞書」をテーマに取り上げました。

辞書は新「ことば」シリーズ5「辞書」(平成8年)でテーマに取り上げられています。しかし,言葉をめぐる状況は時代とともに変わります。辞書もその例外ではありません。同じテーマであっても,自ずと取り上げ方が変わります。

最も大きな出来事は電子辞書の普及です。辞書は元々私たちにとって最も身近な言葉の情報源でした。ただ,一定以上の語数の辞書となると持ち運びが不便で,辞書を引きたいと思っても手元に辞書がないことがよくありました。たくさんの語の中から調べたい語を探し出すのもなかなか面倒な作業でした。

それが,電子辞書の登場により,「その場ですぐに辞書を引く」「調べたい語をすぐに見つける」ということが以前よりも容易にできるようになりました。辞書の「言葉のツール」としての利便性が格段に増したわけです。学校の授業でも,多くの学生や生徒が電子辞書を机の上に置き,分からない言葉があればすぐに辞書を引いています。

このような状況をふまえ,今回のシリーズ22『辞書を知る』では,辞書の「言葉のツール」としての役割を前面に出し,「世の中でどのような辞書がどのような目的で作られているか」,また「辞書の作り手・使い手が何を考えて辞書を作ったり使ったりしているか」を広く知っていただくことを意図して編集しました。

巻頭エッセイでは,井田由美氏(日本テレビ)にアナウンサーと辞書とのかかわりについて紹介していただきました。

第1部「座談会:いまどきの日本語・いまどきの辞書」では,日本語研究者であり,辞書編集の経験も豊富な北原保雄氏,山口仲美氏に,辞書と現実の日本語との微妙な関係についてお話しいただきました。

第2部「解説」では,辞書編集の最前線で活躍されている飯間浩明氏と矢澤真人氏に,それぞれの立場から,辞書編集の舞台裏やこれからの辞書のあるべき姿について書いていただきました。

第3部「辞書のいろいろ」では,「国語辞典」「時代別の国語辞典」「方言の辞書」「発音の辞書」「専門語の辞書」「外来語・カタカナ語の辞書」「日本語を学ぶための辞書」「コンピュータの辞書」など,23種の辞書について紹介を行いました。

本書を通じて,辞書の多様性,そして辞書と作り手・使い手のかかわり方の多様性の一端に触れていただき,「言葉のツール」としての辞書をさらに身近なものに感じていただければと思っています。

『新「ことば」シリーズ22「辞書を知る」』

  • 巻頭エッセイ「アナウンサーと辞書」(井田由美)
  • 座談会「いまどきの日本語・いまどきの辞書」(北原保雄,山口仲美,杉戸清樹)
  • 解説「辞書は何のためにある」(井上優),「辞書の記述の舞台裏」(飯間浩明),「バリアフリーの国語辞典」(矢澤真人)
  • 辞書のいろいろ(国語辞典,発音の辞書,コンピュータの辞書など23種の辞書の紹介)

『新「ことば」シリーズ22「辞書を知る」』
A5判128ページ,2009年3月,ぎょうせい,税込500円
本書は一般書店で購入できます。

(井上 優)

 新「ことば」シリーズ:http://wwwkokken.go.jp/kanko/shin_kotoba_series/

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。