国語研の窓

第39号(2009年4月1日発行)

刊行物紹介:『日本語ブックレット2007』

『日本語ブックレット2007』:/archives/nihongo_bt/
Webブラウザで閲覧できます。また,PDF版をダウンロードして閲覧することもできます。

「日本語ブックレット2007」トップ

『日本語ブックレット』は,日本語に関する動向や資料を分かりやすい形で広く提供することを目指し,平成17年度より毎年,電子版として定期刊行しています。

今回刊行した『日本語ブックレット2007』は,図書,総合雑誌記事,新聞記事といった3種類の資料をもとに,平成19年(2007年)の日本語をめぐる動きをまとめたものです。第1部<動向>では,3種類の資料それぞれについて,2007年1年間の日本語をめぐる状況・傾向を全体的に記述し(概観),その中からトピックを取り上げて,より詳しく述べています。さらにそれぞれのトピックに関係する図書や記事の情報を,第2部のデータから抽出して,関連文献情報として示しました。また第2部の〈文献一覧〉では,3資料の文献データを一覧することができます。さらに文献検索では,既刊分と併せて2005年から2007年までの3資料の文献データを横断的に(または,資料を選択して)自由に検索することができます。

それでは,実際に2007年の動向を見てみましょう。まず,3資料全体を概観します。毎年刊行されてきた新語・現代語辞典3種のうち2種が休刊するなど,電子辞書・ウェブ辞書の普及による書籍体の辞書の苦境が続いており,総合雑誌・新聞でも今後の展望などが論じられました。その一方,新潮社編刊『新潮日本語漢字辞典』(9月),小野正弘編『擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』(小学館・10月)といった,内容のユニークさで注目を集めた書籍体の辞書もありました。さらに『広辞苑』第6版(岩波書店)の刊行が発表される(10月)と,「いけ面」「顔文字」「ニート」等の新設項目などの話題が総合雑誌・新聞に加えて幅広いメディアをにぎわせました。

このほか,ベストセラーに名を連ねたケータイ小説についても,その文体などが話題となりました。さらに,『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫)の人気に代表される西洋文学の新訳ブーム,Googleの書籍検索サイト「Googleブック検索」の開始とそれに対する慶応義塾大学図書館の協力表明(7月)も注目されました。

次に資料ごとに見ていきます。図書では,500円玉1枚で買える「ワンコイン本」のうちで「国語力」を書名にうたったものが人気を博しました。また2006年10月に死去した白川静氏の業績の影響もあって,漢字の成り立ちに関する本が相次いで刊行されました。さらに文化審議会国語分科会敬語小委員会の答申『敬語の指針』(2月)が敬語の5分類案などで大きな話題を呼んだのも手伝ってか,敬語の使い方に関する本が多く出ています。

総合雑誌記事では,この世代の読者が多いこともあり,特集の中で団塊世代とその言語生活に関連する記事が多く掲載されていました。昭和時代への回顧も特徴的であり,昭和期,特に団塊世代が生きてきた戦後の言葉を扱った記事が多く見られました。

新聞記事では,図書館の使われ方・機能の広がりに関する記事や,裁判員制度の導入(2009年5月)をにらんだ法廷用語に関する記事が目立ちました。また朝日・日経・読売の3社による共同サイト「あらたにす」の開設(2008年1月)が発表されるなど,ウェブ版との連動が進む一方で,朝日・毎日・読売の各紙がそれぞれ文字を拡大した紙面への移行を打ち出すなど,紙媒体での新たな動きも見られました。

(新野 直哉)

『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。