第40号(2009年7月1日発行)
初めてお聞きいただく方も多いかと思います。私ども独立行政法人国立国語研究所は,今秋9月末日に独立行政法人としての組織を解散し,10月1日からは大学共同利用機関法人という設置目的の異なる組織に属する研究機関となります。
これは,独立行政法人整理合理化という国の施策の一環として行われることです。平成19年12月に「大学共同利用機関法人に移管する」という閣議決定があり,その後,科学技術・学術審議会の「国語に関する学術の推進に関する委員会」で審議され,大学共同利用機関法人人間文化研究機構に属する研究機関とすることが望ましいという報告が平成20年6月にとりまとめられました。そして,平成21年1月末,この件に関する法律が内閣提案で第171国会に提出され,衆参両院での審議を経て3月31日に可決成立したというのが,ことの経過です。
国立国語研究所は,昭和23年12月に当時の文部大臣の所轄研究機関として発足しました。その後,昭和43年に文化庁が設置されたのに伴って文化庁附属機関に,さらに平成13年に国の行政改革の一環として独立行政法人に,そのつど機関としての在り方を変えて現在に至っています。
しかしながら,研究所の任務の基本的な内容は,創立以後の60年間,変わらずに来たものです。その任務とは,国語や国民の言語生活,外国人に対する日本語教育に関する科学的な調査研究を行うこと,そしてこれを基盤として,国語や国民の言語生活の改善,日本語教育の振興を図ることにあります。
外国人への日本語教育に関する研究事業を昭和40年代後期に加えたことなど,扱う領域に変化はあったものの,国語や国民の言語生活に関する確実な調査研究を踏まえて,国の言語問題に向き合い,国語施策に寄与する成果を提出するという任務は一貫しています。
一方,大学共同利用機関は「大学における学術研究の発展等に資するために設置される大学の共同利用の研究所」(国立大学法人法)で,「学術研究の拠点として,大規模な施設設備や膨大な資料・情報などを全国の大学等の多数の研究者の利用に供するとともに,それを通じて効果的な共同研究を実施する研究機関」(人間文化研究機構要覧)です。
国立国語研究所が移る先の人間文化研究機構は「人間の文化活動並びに人間と社会及び自然との関係に関する研究」(国立大学法人法)を研究分野とする組織で,現在次の五つの機関が属しています。
国立歴史民俗博物館(佐倉市)
国文学研究資料館(立川市)
国際日本文化研究センター(京都市)
総合地球環境学研究所(京都市)
国立民族学博物館(吹田市)
国立国語研究所は,この機構に属する六つめの研究機関となるわけです。
独立行政法人から大学共同利用機関法人という異なる種類の法人に移るため,国の省庁,人間文化研究機構,現研究所の関係者は,この一年半の間,新しい組織や研究計画などの検討を続けてきました。
念のため書き添えますが,所在地や建物は現在のまま受け継がれます。しかし,上に記したように,法人組織としての設置目的や任務,あるいは制度の内容などには基本的な違いがあります。
一方,3月に成立した法律は,国立国語研究所で行われてきた国語に関する調査研究が,外国人に対する日本語教育に関する調査研究も含めて,維持・充実されるようにする措置を国に求めています。
そのような中,大学共同利用機関に移行する国立国語研究所が,従来蓄積した研究成果を継承し,調査研究も維持充実させながら,大学共同利用機関としての新しい役割を十分に実現するための検討や準備は,いま文字通り大詰めの段階にあります。
平成19年年末の閣議決定からこの段階に至るまで,一方では独立行政法人としての研究計画を全うすることについて,また他方では異なる法人組織へ移行することについて,本当に多くの皆様からたくさんの御支援をいただきました。心からのお礼を申し上げます。併せて,今後とも変わらない御理解と御支援をくださいますようお願いいたします。
(所長 杉戸 清樹)
『国語研の窓』は1999年~2009年に発行された広報誌です。記事内のデータやURLは全て発行当時のものです。