ことばの疑問

語源や由来の説

2015.04.27 山田貞雄

質問

番組制作会社で仕事をしています。これから放映するクイズ番組を企画しています。国語の語源や由来をインターネットで集めましたが,その真偽を国立国語研究所で明らかにして,保証してくれませんか。

回答

結論からいえば,国立国語研究所は,語源や由来の説の,いわゆる「裏どり」には応じません。それには大きく二つの理由があります。

その一つは,語源や由来ばかりではなく,番組制作やウェブ発信といった事業者の方に対して,国語研究所の電話による質問応答は,(1)調査の代行 (2)制作上の判断 (3)番組等の監修 の,いずれをも行ないません。これは,一種の行政サービスとしての質問応答そのものの,公平を図り,その範囲を越えないためです。

二つ目には,そもそも,現代の言語の科学としての日本語学にとって,語源論は,その中心的な研究対象や範疇に入らない,と考えるからです。近世までの国語学者や国文学者あるいは民俗学者は,考証学や方言学を展開する過程などで,かなり広範な語源論を展開しています。いわば諸説が出そろった感さえあります。最初の近代国語辞書『言海』の編著者だった大槻文彦も,その辞書の中で語源に関する自説を紹介しています。しかし,その後の近現代の辞書類では,新たな語源説を展開したり,従来言われている説の真偽や優劣を論じたりすることは,ほとんどありません。それらが必ずしも科学の対象になり得ない,という論理上の限界を考えているからでしょう。

一方,語源や由来というのは,落語の落ちや,昔話の結びにも出てくることがあります。そのような民間語源たんたんを含め,多くの人の興味や話題を提供し,それらを語り継いだり,時には,教訓を与えたりしたことも事実でしょう。しかしこれは,言語そのものの科学的な解明を目的とする学問というより,言語にまつわる文化伝承の世界といえます。

なお,従来の語源説を典拠とともに広範に整理している資料としては,まず,小学館『日本国語大辞典第2版』があります。そこに語源欄の記載があれば,手近でわかりやすく,しかも典拠を示しているので,引用にも適当といえるでしょう。また,大槻が行ったのと同じような意味で,言語研究の過程で発想された自説を紹介する学者,たとえば,新村出しんむらいずるの著作にも,その典型は見て取れます。

※取材・監修等に関しましては,別途広報担当に御相談ください。

書いた人

山田貞雄

YAMADA Sadao
やまだ さだお●伝統的な日本語学(旧国語学)を勉強したのち,旧図書館情報大学では,写本と版本の二種によって,『竹取物語』を読みとく授業や,留学生のための日本語・日本事情を担当。その後,国語研究所では,「ことば(国語・日本語・言語)」に関する質問に回答してきました。日常の言語生活や個々人の言語感覚が,「ことば」のストレスにどう関わるか,そこに “言語の科学”は,どこまで貢献できるか,が,目下最大の興味の的です。