2019年2月10日(日)国立国語研究所にて、ワークショップ「くんじゃい しまむにプロジェクト」が開催されました。当日は会場に追加の椅子が入るほどの盛況で、沖永良部島国頭集落(鹿児島県大島郡和泊町)のみなさん16名が、言語継承活動の取組みを発表してくださいました。
2月21日はユネスコが定める国際母語デーということもあり、消滅危機言語の継承と言語の多様性についての理解を深める、非常に有益な会となりました。
家庭内で地域言語を使う機会を増やすためのツール「しまむにコンテンツ」の制作を中心としたプロジェクトです。小学校の夏休みの自由研究として行われます。プロジェクト参加者は今後、島内でのしまむに継承において指導的な役割を担うことが期待されています。
プロジェクトには、以下の3つのパートがあります。
※本ワークショップは、客観的な視点からじぶんたちのことばや文化を発信する(3)に該当します。
※「しまむに」とは沖永良部島で話されていることばで、消滅の危機にある言語の1つです。「しまむに」の中でも、国頭集落で話されている方言のことを「くんじゃいむに」と呼んでいます。
横山晶子(国立国語研究所・日本学術振興会特別研究員)
山田真寛(国立国語研究所・准教授)
消滅危機言語とは?沖永良部語は日本の消滅危機言語の一つですが、言語復興はまだじゅうぶん可能です。世代間継承度を測定する言語実験の結果からも、世界の言語復興の事例からも、それは明らかであるという嬉しい発表でした。
中脇初枝(小説家)
沖永良部島を舞台にした小説『神に守られた島』『神の島のこどもたち』(講談社)ができるまでを中心に、沖永良部島を訪れるきっかけになった昔話についての話や、中脇さんが育った高知県の昔話の語り(『ちゃあちゃんのむかしばなし』より)もしてくださいました。
福島文子(国頭集落村づくり委員教育部会)
国頭集落での方言教室(大人向け、こども向け)ができるまでと、現在までの活動報告。伝統芸能だけでなく、地域文化の継承に積極的な国頭集落の気質が伝わりました。
田代和花、彩羽、雅、勇太、恵
家庭内での取り組みを、くんじゃいむにによる方言しりとりと単語の意味当てクイズとして発表しました。集めた語彙から、くんじゃいむにで「負けになる(=そこから始まる単語がない)」音を報告。これは、日本語や沖永良部語の歴史変化にせまる発見です。
今井響、優、良樹、博美
あじ(お祖母ちゃん)から大根漬けのつくり方を、くんじゃいむにで聞き取り調査。当日は寸劇で再現しました。見事な同時通訳もあり、懇親会では本物の大根漬けも振る舞われました。高校生の優さんは、全体の司会も担当しました。
大栄風翠、希奄、讃一道、潮和、勝吾、ひろみ
「ハジフチヤマダ(赤とんぼ)が多い年は台風が多い」というおじいちゃんのティーチバナシが本当になったエピソードを披露。色々なトンボの名前、自然にまつわるティーチバナシを聞き取り調査し、きょうだい4人で発表しました。
大栄家の取り組みとしてくんじゃいむにに訳した「トンボのメガネ」をみんなで歌ったほか、今井優さんの三線で「えらぶの子守唄」も披露しました。
男性陣による「国頭ヤッコ」には、在京の沖州会・国頭校友会から応援に駆け付けた方々も飛び入りで参加。発表会クライマックスを飾るにふさわしい、大変な盛り上がりでした。
発表終了後には、国立国語研究所長の田窪行則教授から、発表者一人ひとりに賞状が授与されました。
発表者・参加者全員で交流会。国立国語研究所副所長の木部暢子教授からの挨拶のほか、各発表家族のお父さんと在京の沖永良部出身の方々からも感想を共有していただきました。沖永良部産の黒糖焼酎が足りなくなるほど、発表会の盛り上がりは続きました。
会場では、本ワークショップを企画した ”言語復興の港” が制作している、沖永良部語を含むさまざまな琉球諸語の絵本や写真集、横山晶子研究員が国頭集落の方言教室と一緒に制作している沖永良部語の教材を展示しました。また中脇初枝さんの小説、昔話集、写真集のほか、”言語復興の港” が制作している島ことばの絵本やバッジなども販売されました。
「くんじゃい しまむにプロジェクト」は以下の研究助成を受けて行いました。